有罪歯車 -日記log-
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HOLY ORDERS -騎士団- #番外編
飛空艇の一室で、資料を手に持つカイは喋る。傍には珈琲を啜るソルが居た。ひたすらに口を動かすカイは説明中。これからの戦いについてだ。会議に出なかったソルに伝えに来たのだ。
しかしソルは軽く聞き流していた。団体行動なんてする気は更々無いのだ。何時もそうである様に、自分の好きな様にGEARを狩るだけなのだから。
「…と言う訳で、今回は私と彼女とクリフ様とソルで各部隊を―――」
(毎回毎回、話なげぇな……)
「今回対峙する事になるGEARは3種居ます。竜型とヒヨコ型と触手型の―――」
「ぶはっ!」
ソルが口に含んでいた珈琲を吹き出した。カイがあからさまに顔を顰めているが、そんな事はどうでもいい。
「可笑しな奴が混ざってねぇか?」
「……触手?」
「………………」
違う。いや、それも異なる意味で "可笑しな奴" だが、それ以上に場違いな何かが……!
きょとんとした表情で首を傾げるカイは一体何だというのか。わざとか? 突っ込み待ちか?
しかし彼がマジだと悟り、ソルは開いた口が塞がらなかった。
「……因みに、ソルは触手型担当。私とクリフ様で竜型を、彼女はヒヨコ型を担当します」
「……」
ああ、やっぱりこの分担か。
どうせ焼き払ってしまうのだから、対峙する相手の形などどうでも良いのだが。
「早く片付く様なら、彼女の方に加勢を―――」
「いや、要らねぇと思うぞ?」
何だ。何なんだ、ヒヨコ型って。
ソルは想像してみる。が、駄目だ。
(嬢ちゃんがヒヨコと戯れてる様子しか浮かばねぇ……)
"GEAR" と言うのだから、凶暴な事に変わりは無いのだろう。…多分。しかし危機感が無いにも程がある。
何だか自分もそのヒヨコ型GEARと対峙したくなってきた。触手型が嫌な訳では無い。うねうね気持ちが悪いのは事実だが、どうせ丸焼きだ。
只ヒヨコ型が気になって仕方が無いのだ。
何故ヒヨコ。ヒヨコである必要性は何処に。鳥が良いなら、鷹なり鷲なり居ただろうに。
「……取り敢えず、必要な事は伝えました。勝手な行動は取らない様に。いいですね?」
「…………」
返事なんてできる訳も無かった。
頭の中はヒヨコ型GEARの事で一杯なのだ。
戦闘後に、どんな姿だったのか訊いてみようか?
さっさと担当のGEARを消し炭にして、自分の目で確認しようか?
カイが部屋から出て行っても尚、考えた。
やはり小さいのだろうか?
ぴよぴよ鳴くのだろうか?
その癖、火とか吐いたりするのだろうか?
黄色でふわふわした物体が……。
(……やべぇ)
凄く、見たい。
珍しくソルの表情が輝いたのだが、それを知る物は誰も居なかった。
fin.
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09/08/04