有罪歯車 -日記log-

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全力affettuoso # 5月31日




「誕生日おめでとう、二人とも」

柔らかな抱擁と、祝いの言葉。その腕の中で、双子は顔を見合わせた。
誕生日のこの日は沢山の贈り物と言葉を貰った。前から欲しかった物や、何だかよく判らない物。大切な人から、この人は誰だっけ? なんて思いもする衛兵の人から。
色々な品物と、声と、笑顔。

急な来客とやらで大きなパーティは開けなかったけれど、部屋に集まれる人達と開いた小さな小さなパーティ。とても楽しかった。空いた時間に会いに来てくれる人達の存在がとても嬉しかった。



陽が沈み始めて、パーティは終わりを告げた。
月が出て、再び耳にした祝いの言葉と温かな抱擁は、父がくれたものだった。
皆よりずっと遅い、そして強い想いの篭った言葉。"おめでとう" と "ごめんなさい"。離れる身体、触れたままの父の手。

双子は顔を見合せたまま笑った。沢山貰った言葉の中、一人だけ哀しそうなその言葉に対して、半ば呆れながら。
エメラルドグリーンの瞳がふたつ、父へと向いた。哀しげな笑顔を捉えて、二人揃って溜息。

「んな顔すんなって、カイ」
「そうだよ。私達が苛めてるみたいじゃない」

父が何を思うのか、今の双子には関係無い。誕生日を覚えていてくれたし、こうして抱き締めて、心からの言葉をくれた。それで充分だ。とても嬉しかった。テーブルに残しておいた食べ物も、その想いも無駄にはならない。

「わ、私はただ遅くなってしまった事が……」

"苛めてるみたい" という言葉に父は慌て始める。遅くなったから、皆と祝ってあげられなかったから、だから "ごめんなさい"。本当に、何故引け目に感じているのだろう。

「とにかく、その泣きそうな顔なんとかしろよな」
「あと "ごめんなさい" もいらない。じゃないと、残しておいてケーキ、食べちゃうんだから」

泣き出しそうだった父は、静かに頷いて、"ありがとう" と呟いた。何時もみたく笑って欲しいね、と双子はもう一度顔を見合わせる。口にしないのは、ちょっと照れ臭かったから。

するりと父の手から離れた双子が向かうのはテーブルだ。冷めてしまったご馳走と、一切れだけのケーキの前で、早くおいでと手招き。口にしないのなら、行動で。
ゆっくりと父はついてきた。

「一緒に食べましょう? プレゼントはその後で」

笑う父に先の哀しさは見えない。だから双子は満足して頷いた。
そろそろ片付けを手伝いに行った母も戻ってくる筈だ。
家族でもう一度、小さなパーティを。
今日一番幸せな時間になるかな、なんて心の片隅、無意識に思いながら、昔よりずっと近くに感じられるようになった父に寄り添って、微笑んだ。






Bon Anniversaire !!






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10/05/31


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