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□幸福論
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「今、何て…?」
「だから、某は妻を迎えると言ったのだ。」
旦那から命をうけた任務から帰り、報告を終えて旦那から聞かされた話が、旦那が妻を迎えるということ。
そんなこと一言も聞いていなかったので旦那に問い詰めれば、
「佐助が任務へ行っている最中に決まったのでな。」
と返事が返ってきてしまった。
「よかったじゃん。」と答え旦那の前から姿を消したけれど、納得ができない自分がいる。
今までにも何度かそのような話があったけれど、幸村は全て断ってきた。
だからこそ、急な決定が余計に納得できない。
「旦那も変わったのかねぇ…」
そう呟いた佐助の顔はどこか寂しそうだった。
そして着々と幸村の妻を迎える準備を進めていた ある日、突然幸村が佐助に問いかけた。
「佐助は某のことを祝ってくれるか?」
「何さ、急に。びっくりするじゃんか。」
「いや…その、急に決まったことだろう?だから佐助はどう思っておるのか気になってだな…」
そんなこと、言わないでほしい。そんなことを言われたら妻を迎えないでと言いたくなってしまう。
でも、それは叶わない。
今ここでそんなことを言ってしまえば、主である幸村の幸せを奪ってしまうことになる。
そう、自分では与えることのできない幸せを。
「……当たり前でしょ。だって俺様の旦那だよ?未来の奥さんと幸せになってほしいからね。あー…でも旦那と話す時間が減っちゃうのは寂しいかもねぇ。」
嘘の塊の中に少しだけの本音を入れて。
その思いに気づいてほしいなんて馬鹿げてるな、なんて思いながら返事をする。
「…そうか。」
しかし、その返事に返ってきた言葉は短く、少し冷たかった。
そして、幸村はどこか思い詰めた表情だった。