学園戦闘記

□夕日と本とその正体
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日も傾き、各生徒が部活に励んでいるころ。


短髪の男子生徒は、ひとり準備室に残っていた。


オレンジのひかりが部屋いっぱいに入り込み、男子生徒の白い髪を染める。




手には分厚い原稿用紙の束が…
―ガウルが書いた反省文だ。

委員長は深く溜め息をついた。


反省文というにはあまりにも分厚すぎ、ずっしりと手に負担をかけてきた。

「本当に200枚書いてきたのか…」

反省文というかもう小説みたいになってる。
委員長は小説雑誌の『小説募集』の欄を思い出した。




その時、隣の教室―図書室から人の気配がした。



部屋の奥の、図書室に繋がる戸に、振り向かず意識だけ集中させた。



人は、うまく気配を消そうとしても、殺気や空気の緊張により完全にはその気配は消えない。


机にわざと音をたてて原稿用紙の束をおいた。



「何か用か」



「あら、ばれてた?」


悪びれる様子もなく戸を開けたのは、見覚えのない男子生徒だった。

長い髪をひとつにまとめている。

服装は独特で、袴のようなものをはき、羽織りをきている。



「いやぁ、さすがは委員長様さまだねぇ。うまく気配消したつもりだったのにさぁ」





「何の用だ」

また繰り返した。


「ふーん、近くで見ると、意外とちっちゃいねぇ。」

「おい」


色素の薄い瞳でまじまじと委員長をみた。




「あんた、なかなかボロ出さないね。」


「…何がだ…?」



男は近くの机にもたれかかった。

するとぼんやりと向かい側の本棚をみつめ

「副委員長・夕月…通称ゆずきちゃん。魔獣使いの一族。半分魔物の血が混ざっているので、魔獣の言葉を理解できる。
書記・陸。校内の不良を束ねる『鮮血組』の長。趣味は土いじり。

他、会計、庶務二名の情報もある」



男は顔色ひとつかえず言い終わると、委員長の方に向き直った。




「で、“委員長”さん、あんたは?」


悪戯っぽく薄く笑みを浮かべた。
夕日の光が、男の逆光になって眩しい。


「自分が知ってんのは、あんたが委員長さんだってことぐらいだ。」
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