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□できれば知りたくなかったこと
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「私には死というものが理解できません」
淡々と、決済の報告書を読むかのごとく。
いつかと変わらない口調で、赤眼の男は水の都市を治める王へ告げた。
男の目の前でブウサギを撫でていた背中が、一瞬ピクリとする。
が、それもすぐ何事もなかったかのような顔に戻り、宝石の名を冠する王は撫でる手を再開した。
男はもう会話する気がないようで、ぼんやりとこちらを、いや、王の手の中の存在を眺めていた。
無性にどうしようもなくなって、王は心から呼び掛けた。
本当にいて欲しい存在の変わりにブウサギの目を見ながら。
(なあ、ルーク)
ブウサギのまんまるい瞳。
どこまでも純粋な輝きは、目に入れても痛くないほど王が可愛がっていた子供と同じだ。
覗き込むとガラス玉のように世界の全てを映しこんで。
あの子供にこの世界はどんな風に映っていたのだろう。
(なあルーク。良い年して馬鹿みたいに滑稽で哀れな男が、二人もここにいるよ)
聖なる焔が消え。
王はブウサギに構う時間が目に見えて増えた。
そして、その光景を見にくるようになった男。
(ルーク、最近のあいつはお前の名前にだけ反応するんだ)
それがどういうことか、王は知っていたけれど。
「もうわかってるくせに」
とは、決して男には言わなかった。
(理解できてしまっていた)
(あの子がもういない笑わない喋らないと)
(ただ認めたくなかっただけ)