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□今、口にしてしまったら
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アニメ版映画「時をかける少女より」千昭×真琴




何よりも見たかった世界がそこにあった。









今、口にしてしまったら











現代に帰ってきて、まずあの絵が残っているのか探した。

少し手間取ったけれど、すぐに見つかる。
やはり歴史は変わっていたのだ。

(前ん時はこの時代まで残ってなかったからな。馬鹿なくせに、やるじゃん)


生意気なショートカットの少女はちゃんと自分との約束を守ってくれたらしい。
そう思ったら、いてもたってもいられず、休むのもそこそこに検索サイトに指定された場所へと向かった。




何よりも見たかった世界がそこにはあった。

今から気が遠くなるくらい遥か彼方の時を経た絵画は、変わらない美しさを持ってこちらに訴えかけてくる。
絵師は飢饉と大混乱の時代に、何を思って描いたのだろう。

菩薩にも吉祥天女にも見えるモデルの表情からは苦難の様子は陰も形も見られない。


「…サンキュ」


ほんの数時間前に別れた相手へ向かって呟いた。
まだこの手には触れた彼女の感触が残っている。

あのまま抱き締めて、ずっと言いたかったことを言ってしまいたかった。
だけどできなかった。

(言ってたら、行けなくなってたからな)


苦笑して、右手をぎゅっと握り締めた。

長いする気はなかったのだが。
ずるずるずるずる帰りを引き伸ばして。
帰れなくてもいいな、そう思ったこともあった。

空はあんなに広くて、水はあんなに清く流れてた。
データベースの中じゃない、実際にやる野球は予想以上に楽しかった。
そして何よりもあいつらがいた。
はじめてだったんだ。
あんな風にまるで赤ん坊の頃からの知り合いみたいな奴ら。
親友って言葉を使うのは気恥ずかしいけど、しっかりと本当の俺を見て理解してくれた友達。

恋もした。
生意気なやつだったけど、誰よりも素直で可愛かった。
たくさん泣かせてしまったけど、それが自分のせいだと思うと嬉しかった。

(やっぱり告白しときゃ良かったかなぁ)

だって俺、おかしいんだ。
あんなに見たかったはずなのに。
すごく見るのに苦労した絵が目の前にあるのに。

全然絵なんか見てない。
今何よりも見たいのはくるくる変わる百面相。
俺の好きな女の子なんだ。

(カッコつけるんじゃなかった…)

今さら後悔しても遅い。
その時、ふと絵画のネームプレートに目が行った。

(あれ?)

作者不明のままだったが、題名が変わっている。


あいたい


たった一言。
誰の仕業かなんて考えるまでもなく。

「ははははっ、かなわねえなぁ」

なんだか気が抜けて思いっきり吹き出した。
一気にあの夏が戻って来たみたいだった。

「仕方ねーな。待ってろよ」


どんなことをしてでも会いに行くから。

そしたらあの時言えなかったことをちゃんと教えてやるよ。






この絵に誓って。


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