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□079 雨音のなぐさめ
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(失敗した…)

千昭は己の浅はかさを呪った。

雨音のなぐさめ


真琴がプリンが食べたいと言いだしたので、仕方なく。
本当に仕方なく鍵を手にして二人は千昭のアパートを出た。

ここに功介がいたら「留学終わってからお前、ますます真琴に頭が上がらなくなったよなあ」甘やかしすぎだろ、と呆れながら突っ込んでくれるのだが、幸か不幸か彼はいない。


コンビニでお目当てのプリンと、シャンプーの詰め替えと千昭のミネラルウォーターを買って、ずっと真琴はご機嫌だった。

にこにこしながら鼻唄を歌い、千昭の横に並んでいる。

(んとに、おめでたいやつ)

そんな真琴から目を離すことなく、左手にコンビニ袋を下げて右手を真琴と繋いでいる自分もご機嫌だということに俺は気が付いていなかった。


「雨!」

唐突に真琴が叫んだ。
空気が生ぬるいから危ないとは思っていた。
が、思っていたより早くそれはやって来た。
みるみる地面に染みを作り上げ、梅雨の雨は勢いを増していく。

自分が濡れることはなんともなかったが、真琴はバカだから夏風邪をひいたら大変だ。
軽く手をひく。

「うちまで走るぞ」

「うん!」

コンビニ袋をかばいながら、二人は一目散に走り出した。


「だぁー!蒸し暑いよ〜」

扉を開けた瞬間、むわっとした風につつまれて、全くだ、と俺も同意する。
一応窓は開けて出かけたのだが、あまり効果はなかったようだ。

気温が高い中で降られるとじめじめと嫌な汗をかくし、服はびっしょりと雨にやられてしまっていた。
真琴の張り付いた前髪からもポタポタと滴が落ちている。

「そのままじゃ風邪ひくだろ。先にシャワー使って」

「うん、ありがとー」


真琴が風呂場に引っ込んだのを見計らってから、手早くネイビーのTシャツとジーパンに着替えて、洗濯機を回す。
真琴の分のタオルと着替えも置いた。

「着替え置いとくから」

「はーい」

風呂場から元気に答える真琴。
俺は玄関から濡れた廊下を雑巾でぬぐって、ようやく腰を下ろした。

少し開けたままの窓から聞こえている優しいメロディ。
雨は好きだった。
雨に濡れるのも悪くないと、ここへ来て初めて知った。
自分の生まれた場所では汚染が進み、雨や紫外線にあたることは生死に関わるのだ。

恐ろしいとしか思わなかった雨が、こんなに優しいものだったなんて
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