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□青い鳥
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しあわせをさがしていたの。
アリスは、道の真ん中でじっと立ち止まっているひょろりとした長身と長い手足、
そして長い舌の恋人を見つけて、声をかけようか迷った。
(なにみてるのかしら?)
ぼーっと突っ立ているわけではなく、視線は足元に注がれている。
ビルはとかく表情が顔に出ないから、雰囲気で推し量るしかないのだが…
(なんか…困ってる感じ?)
アリスにはだんだんと読めるようになってきた。
愛らしい女王様には「何を考えているのかわからなくて気持ち悪いわ!!!!」と、
評される彼だが(第一、首の下に体があるのが気に食わないらしい)、
アリスはそんなことない、と思うのだ。
特に、ビルが微笑んだと感じる時、柔らかい雰囲気はとてもとても気持ちが良い。
もうちょっと話す時間があれば女王様もきっとビルが好きになるのに。
(女王様とビルがもっと仲良しになれたらいいなあ…あ、あと猫もね)
ちなみに、ビルの雰囲気が柔らかくなるのはアリスの前限定ということを、
知らないのは当の本人だけだった。
アリスを独占しているビルに「万死に値するわ!」と叫んだ女王様と、
不穏に爪を研ぎ光らせた猫がいたことも、勿論知らない。
世の中には知らないほうがいいこともたくさんある。
(あ、小鳥)
ビルが何を見ているのか、わかる位置まで足をすすめたアリスは、なるほど、
と立ち止まった。
ビルの進む先には一羽の青い小鳥が、道の真ん中にできた水溜りで、
楽しそうに水浴びをしていたのだ。
もし進めば、あの道幅ではどうやっても小鳥を驚かしてしまう。
周りは森だから迂回することもできるが、やっぱり音がしてしまうだろう。
ビルは静かに、小鳥の行水を見守っている。
(すきだなあ)
アリスは、ほぅ、と小さくため息をついた。
彼は番人であり、全てのものに、たとえアリスであっても公平だった。
望むと望まざるにかかわらず番人だった。
彼が何を思って役割を果たしているのか、まだアリスにはわからない。
ただ、番人であるために、全ての者に公平であるために、調停者であるが故に、
彼にはできないことがあった。
彼は優しい。彼は番人、唯一の調停者。
優しさと彼の役割は、並び立てないもの。
それでも、ビルはアリスを愛した。
歪む事すら許されず、アリスから遠く隔たった場所に立っていた彼が、
初めて目の前まで来てくれた時のことをアリスはきっと忘れない。
恋人になった今でも、彼はなかなか本音を見せない。
だからこそ全てのものに淡々と接する彼が、時折垣間見せる優しさが、
とてもとても愛しいとアリスは思う。
そうこうしているうちに小鳥は羽を広げて、飛び立って行った。
「お待たせしました。私たちのアリス」
「気付いてたの?」
アリスはビルに駆け寄った。
「あなたがいるのにわからないほど間抜けではありません」
(こういうことを言ってくれるようになったのは、大きな前進かな)
アリスはにっこりした。
「そっか。綺麗な小鳥だったね」
「はい」
駆け寄ってきた時のあなたほど、私の心を動かしはしませんでしたが、
とビルは心の中でつけたした。
目の前に立つ人を見つめながら、己の犯した罪の大きさに震える。
きっと本当はこうして触れることさえ許されてはいない。
それでも、自分は選んだのだ。
天理よりも、何よりも、ただ目の前のこの方を。
ビルはそっとアリスの瞼に口付けを落とした。
(貴方こそがわたしのアオイトリ)
ゆっくりと、離れかけたビルの首にアリスは腕を回して引き止めた。
「…もう一回」
「私たちのアリス。あなたが望むなら」
赤い顔で必死に縋る顔をしたアリスがこの上なく、愛しいと思って、
ビルはめったに見せない顔で微笑んだ。
再び目を閉じたアリスの耳に、
高らかな小鳥の歌声が聞こえてくる。
青い鳥
(まるで世界から祝福されてるみたい!)