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□青い服
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むかしむかし
あるところに金の髪、蒼玉の瞳を持つ王様がいました。
王様は国を愛し、民を愛し、そして―
おや、とネクロマンサーと呼ばれる青年は光溢れ、大小様々な噴水が遊ぶ中庭に目をやった。
一国の王が威厳も何もなく子供と戯れている。
その様子を少しだけ眺めて、目を細めた青年は黙って立ち去った。
「似合うな!ルーク」
ピオニーはご機嫌で自分が選んだ衣装を、そして衣装をまとう青年を眺めた。
無駄な装飾をはぶいた空色の服は、朱く輝くルークの髪をよりいっそう際立てる。
ルークは困ったように笑う。
「陛下も青が似合いますよ」
実際困っていた。
腕組みをして楽しそうに笑う男は自分と非常によく似たデザインを着ていた。
これペアルックとかいうやつだよな。
今なら俺は恥ずかしさで死ねる…。
ルークは逃げ出したい気持ちでいっぱいだ。
しかし、相手がピオニーではそれもままならない。
それに、とルークは満面の笑顔でこっちを見ているピオニーを、おそるおそる伺った。
なんだか、陛下はいつもいつもマイペースで自信たっぷりで王様らしい王様なのに、さっき「これ着てみろ」と渡す時に少しだけ心配そうだったのだ。
その目が「気に入るかな」と語っていて、ああ、この人でもこういう顔をするのかと思った。
「綺麗な服ですね」とルークが言ったらパッと顔を輝かせて「似合うと思ったんだ」と、照れくさそうに言ったピオニーは、いつものルークが苦手な彼とは少し違っていた。
ピオニーの新しい一面を知るたびに、逃げ出したいのに、もっとこの人を知りたい、もっと近くに行きたいとも思う自分が不思議だった。
いつもの服を脱ぎ真っ青な服を着崩しているピオニーは、自分よりよっぽど似合っている。
至極あっさりとピオニーも頷いた。
そういうところはやっぱり陛下だ。
「似合うのはとうぜんだな。だが…俺は青より朱の方が好きだ」
それからピオニーは背をかがめてルークの頬に自分の頬をそっと当てた。
耳元で出来るだけ甘く囁けば、ふるりと震えてしまう可愛い可愛いルーク。
ルークにしてみれば、何してんだこの人!と信じられない思いだ。
なんで陛下は俺達がここへ来るたびに俺で遊ぶんだろう…。
なんでこんな俺にかまってくれるのだろう。
疑問を素直に口にしたら、なぜか陛下は泣きそうな顔になった。
何かまずいことを言ってしまったらしいが、何がまずいのか今のルークにはわからなかった。
「こういうことだよ」
ピオニーは、そうして己の価値を何よりも低く置いてしまった哀れな子供をそっと抱き締めた。
自分が哀れだとさえ知らない彼を、誰よりも幸せにしたいと思った。
それからニヤッと笑った悪い大人はおもむろに子供の唇をぱくり、と食べてしまうように合わせるとゆっくり名残惜しく離れた。
「へっいか!?」
「わかっただろ?今のは、まあツバを付けたってところか」
華やかに笑ったピオニーに対して、ぎょっとした顔でルークは鼻をぬぐった。
汚いなあ、とその顔が言っている。