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□047 これからの身の振り方について
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「ふぃ〜」
一護から気の抜けた声がもれた。
「いい湯だねえ」
極楽極楽、と歌いだしそうな上機嫌で浮竹は髪の毛を手ぬぐいでまとめた。
二人は天然の温泉に来ていた。
仄かに白く濁ったお湯は柔らかく体をほぐしていく。
なめらかな湯にゆったりと身をゆだねれば、 こころもカラダもほぐれ、疲れがすっーとお湯にとけていきそう。
その昔、白鳥が傷を癒したという言い伝えが残る、知る人ぞ知る秘湯。
少しぬるめのお湯は長くつかるのに適していて、体が芯からポカポカする。
「やっぱ温泉はいいな…」
うっとりした様子で一護は目を閉じた。
それを見守る浮竹の頬も常になく血色が良く見える。
「連れてきたかいがあったよ!」
京楽が教えてくれた秘湯なだけはある。
「今度の十三隊の慰安旅行もやっぱり温泉がいいかなあ」
なんだ慰安旅行って。
思ったけれど、どこかのサラリーマンのようなセリフに一護はつっこまないことにした。
「なんつーか。こう、もっと死神って軍隊みたいなのを想像してたんだけど」
けっこうゆるい気がする。
まさか女子供があんなにいるとも思ってなかったし。
一護は思わず十一番隊の副隊長を思い浮かべた。
「何か言ったかい?」
「いや…、そうだ十四郎さん。背中流してやるよ」
「お、それはいいな。流しっこしようか」
「うん」
体がほぐれたところで、天然岩を使った湯量たっぷりの風呂から上がり、まずは一護から洗うことになった。
目の前に広がる日本庭園や山々の景色。
自然の息吹を感じながら、開放感いっぱいの一護はわしゃわしゃと手ぬぐいに石鹸を泡立てた。
「いくぜー」
「頼むよ」
普段見ることのないうなじに目を奪われながら、
泡を滑らせるように、軽く力を入れてこする。
「どう?」
「もう少し力を入れてくれて大丈夫だよ」
「了解」
広い背中は紙のように白い。
それでも付くべき筋肉がちゃんと乗っていて、以外と着やせするタイプなのかも、と思った。
よくみるとあちこちに男の勲章でもある戦いのあとがある。
もう塞がった傷の中にはかなり酷いものもあって、隊長の過酷さを思わせた。
あれ、と。
一護は肩の少し下に走る真新しい傷に気付いて指でなぞった。
(なんだろこれ)
両肩に数本走る傷。
「一護っ」
慌てたように、浮竹が一護を押しとめた。
「あ、悪い。まだ痛かったよな」
「いやその、痛くはないんだが…」
そう、痛くは無いのだ。
ただちょっと昨夜の名残が燻りかけては、いろいろまずい。
傷をつけた本人は気付いていないらしく、浮竹はこっそりと息を吐いた。
一護は気を取り直して、優しく肩をこすった。
「気持ちいいよ」
「そうか」
よし、もっと頑張ろうと思って両手を使って上下させる。
たくさんのものを背負った広い背中。
憧れる。
いつか彼を越すような男になれたら、と。
まだまだ子供の自分では歯がゆい思いばかりだ。
これからの身の振り方を思い、早く大人になりたいと願った。
「俺さ、そのうち十四郎さんよりもでっかい男になるからな!」
できたらそのままでも嬉しいな、と浮竹は思ったけれど、彼の成長を見守っていけるのは楽しそうだ。
「どんな一護でも俺は好きだよ」
ざばあっと桶で勢い良く水をかけられた。
振り返って一護の顔を見ようとすると、浮竹の顔に向かって桶の水が襲ってきた。
「ぷはっ、うわ、ちょっ一護!?」
照れ隠しだと分かっているから、可愛くてたまらない。
どんなに背が伸びて大きくなっても、きっと彼はこのままなのだろう。
「ほら、次は十四郎さんの番だろ!!」
「わかったよ」
くるっと後ろを向いて座ってしまった一護の顔はうつむいて見えない。
ものすごく眉間に皺を寄せて、赤くなっている顔が容易に想像できて、浮竹は声に出さないで微笑んだ。
今夜もきっと、肩の傷は増えるに違いない。
047 これからの身の振り方について