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□034 後悔を予測する賢さ
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ふと視界をあげると、携帯が点滅しているのに気が付いた。
『ご飯できました。区切りが着いたら来て下さい』
五メートルも離れてない。
隣の部屋からの手紙。
マナーモードにしてあったから、気付かなかった。
送られてきてからもう30分以上過ぎている。
「いくら集中したいから出てけって言ったからって…」
ノックとか一声かけりゃいいのに。
そう思いながら、こっていた肩のこりをほぐすとボキっと鳴った。
高階のおかげで絵はだいぶ完成に近付いた。
良い匂いに気が付いて、リビングへの扉を開けて椅子に座る。
「待たせちゃったな」
「待つのも楽しいですから」
お疲れ様です、と高階が目の前にコーヒーを置いてくれた。
「ん、ありがと」
ちびちびと飲んでいるとあっという間に豪勢な夕飯が並ぶテーブル。
今日は洋風みたいだ。
高階は和食も洋食も簡単に作ってしまう。
しかもうまいんだよなー。
「はい!それじゃあいただきます!」
両手を合わせて元気良く言う高階につられて、俺も手を合わせる。
「…うまい」
「良かった。こっちも手を伸ばしてくださいね」
「おう。そういえば今日は病院いったんだろ」
お母さんどうだった?と聞けば、「相変わらずです」と高階は肩をすくめた。
「あの人に周りが良くしてくれるみたいだから、小康状態って感じかな」
「そうか」
高階は母親を、「母さん」と同じ頻度で「あの人」と呼ぶ。
そこには薄い壁が有るようで、高階の傷の深さの分掘られた溝なのだろう。
「最近はね。俺が考えて感じてること。色々話してるんだ。母さんの考えてることもちょっと聞けるようになって」
「うん」
それでも前みたいに苦味ばしった顔は随分減った。
穏やかに「母さん」と口にする高階を見られるのは嬉しい。
静かに話す高階の姿は、俺よりもずっと年上に見えた。
一緒に暮らすようになって毎日見られる高階の、子供っぽくムキになった顔も、びっくりするくらい悟ったような顔も、……こっそりスケッチブックに描き止めていることは俺の最重要機密だ。
「あの…」
言いづらそうに、微かに頬をピンク色にした高階が、目を泳がせながら口を開いた。
「高階?」
「あんまり見つめられると襲っちゃいますよ」
「はぁ!?」
いまだにコイツが天然なのか俺はよくわからない。