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□058 左手がいつか手放したもの
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「なあアッシュ」
「ん?」
「覚えてて。名前を呼ぶときはいつも、好きの意味がこもってるって」
「なっ、なんだ!?いきなりお前は・・・」
悪戯が成功した子供の顔でルークはアッシュを見た。
「べえつにー。言いたくなっただけ」
光がはじけるようにルークは笑って、燃えるような夕陽みたいに綺麗で哀しかった。
「お前はなんでも素直に口にするんだな…」
きれいおいしいたのしいうれしい
ルークは、言葉を言うときリハビリをしているようだった。
生きていることの確認をするみたいに。
それは決して自分には真似できないことで、アッシュは少しだけ羨望のまなざしでルークを見た。
「そうでもないけど」
あの時、あいつはどんな顔をして言ったのか。
思い出そうとすれば記憶の中でルークの顔は塗りつぶされている。
「ルーク」
ついにルークをルークと呼べたことはなかった。
「ルーク」
「…ルーク」
お前はいまどこにいるんだ。
058 左手がいつか手放したもの