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□そのためなら僕は
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そのためなら僕は(時かけ・千真+功)




仲良くなって、一緒に過ごす時間が増えて。
放課後もずっと話していることが多くなった。
初めて三人で帰った日のことをあたしはよく覚えている。

千昭は自転車を持っていなかったから、「まあたまにはいっか」と、あたしも功介も「だな、お付き合いしますか」なんて言いながら揃ってバスに乗り込んだ。



「バス大変じゃないか?」

「そうそう!自転車にすれば?」

「馬鹿!あんな車輪二個しかねえ不安定なもん乗れるか!」

「…」

「…千昭お前…」

「…なっ、なんだよ」

「あー!もしかして自転車乗れないの?」

「うっ」

いつもすましていた千昭の弱みを見れたようで、あたしは嬉しかった。

「教えてあげるよ」

「まじで?」

「うん、グランドとか広いとこで練習すればすぐ乗れるようになっる、ぎゃっ」

その瞬間、バスが大きく揺れて。
自分を支えられなくなったあたしは、手すりを手放してしまった。

目を閉じることもできないまま。
後ろに倒れこむはずだったあたしの肩を千昭が抱きしめた。

細みなくせに。
以外と逞しい腕がしっかりと支えてくれていた。
あたしは何が起きたのかよくわからないまま、目を白黒させていると、千昭が大きく息をはいた。

「無事?」

「あ、うん。…えっとありがとう」

真剣な顔をしていた千昭は、ふっと顔を緩めた。
いつもそういう顔をしてればカッコいいのに。

「で?お前らはいつまでそうしてんだ?」

片目をつぶった功介が、おもしろがっている口調で言った。
はっ、とあたしも千昭も今気がついたかのように、すぐ側にあった目を合わせて慌てて離れた。
一気に血がのぼった顔をごまかすように、あたしは言った。

「え〜〜と、そうだ、自転車の話の続きしようよ!」

「はいはい」

「俺は別に乗れなくても」

「いいから。自転車ってね、歩いてる時よりも風があたって、夕焼けの川原とか、朝の涼しい時とかに飛ばすと最高なんだよ」

千昭も絶対気に入るって!
そうしたら、学校からグランドまでも移動楽だし。
楽しそうだとあたしは思った。

「それ…ちょっといいな」

「でしょう?」

慣れると、二人乗りや両手を離しても運転できると、あたしと功介が説明して、段々千昭も乗り気になったようだ。

「上手くなったら、後ろに乗っけてね」

「・・・わかった!」

軽く言った一言に、一瞬黙った千昭が急に大声を出したのでびっくりした。
功介は同じように目を丸くしたあと、「がんばれよ」と千昭の肩を叩いた。
良くは分からないけど、まあいいかと思ってあたしも笑った。
自転車の練習なんて子供の時以来で、わくわくする。

「がんばろうね千昭」

「あー。まあそのために頑張ろうかな」

「そのため?」

「なんでもない。じゃあ自転車買わねえとな」

「俺安いとこ知ってるぜ」

「さっすが功介」



悪戦苦闘するかと思ったのに、千昭は一週間もかからないで乗りこなせるようになった。

自転車に乗って、三人でいろんなとこへ行ったね。


二人乗りしたのはたった一度、だったけど。


end


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