神様と遊ぶ。

□神様が寝起きドッキリを仕掛けてきた。
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朝、目が覚めると。

「や。」

「……は、ぇ?」

貧乏神が目と鼻の先にいました。

神様が寝起きドッキリを仕掛けてきた。



いやいやいやいやちょっと待て。
落ち着け私。落ち着け心臓。
紅葉にはちゃんとした寝床を用意したでしょうに。
何で当たり前のように隣にいるワケ?すんげー近いんですけど。


「爽やかな朝ですねぇ、市子。よく眠れましたか?」

「さっ、爽やかな朝ですねぇってアンタ何であた…り、」

爽やかな朝って言ってたけど、あれ今何時?
視界の端に入ったカーテンからは日差しが入っているようには思えない。むしろ部屋に灯っている僅かな光を閉じ込めるように窓際に佇んでいた。

「…ねぇ、今何時?」
「えー現在朝の3時30分過ぎですね」
「"爽やかな朝ですねぇ、市子"、じゃねーよ!まだ日も昇ってないだろーが!」
「朝ですよ、早朝。ほらさっさと起きてその寝床を寄越しなさい。私は優雅に二度寝タイムに入りますから」
「おいてめぇ最初からそれが目的か」

くっそびっくりして損した。
返せ私の貴重な睡眠時間。

……というか、何でびっくりして損したとか思ってるんだ私。

そんなことを思っているとはつゆとも知らず、紅葉はいそいそと布団の中に潜りなおしていた。ちょうどいいくらいに温まっていたのか、顔を緩ませて息をついたのを見て。

「なんか小動物みたい…」

「?何か言いました?」

「ぅぇあ?!な、何にも言ってないわよ!」

訝しげに眉を潜めたが、本当に眠たいようで大きなあくびをひとつするとウトウトとまどろみ始めた。
普段から眠たそうにしているが、ここまで眠たそうにしているのは見たことがないかもしれない。
なんというか、今の紅葉は無防備だ。
普段から口は悪いわ柄は悪いわであんまり思ったことはないけども、黙っていれば美人なんだよなあ、コイツ。
いちいちパーツが綺麗で無駄がない。目つきだっていつもは悪いけど決してマイナスポイントではないし。むしろ儚さを感じさせるアクセントだ。
美人は美人でもどことなく人間じゃないような、あ、コイツ神様だったっけ。残念美人神様だ。いや残念美神か?

「……あなたねえ、さっきからジロジロ私の顔を見て何がおもしろいんです?」

「んー、残念美人だなーと思って。…ふぁぁ、」

「、ぅん?え、あー…」

あくびが思わず出てきた。まだ3時半だしなー。なんだか眠そうなコイツ見てたらこっちまで眠くなってきた。まぶたがだんだん降りてきている。
うん二度寝しよう。そうしよう。

「ちょっと毛布半分返しなさいよ。寝るから」

「え、寝るってここで?」

「ここ以外にどこがあるのよ。つーか私のベッドなんだけど」

「は、半分って、え、ぇ?」

「何よ、アンタ二度寝するんじゃなかったの?」

「いやしますけど」

未だにブツブツ言っている紅葉から毛布をめくり上げるとキュッと抱え込んだ膝が見えた。
ホントにコイツ年上なんだろうか。

「ちょっと市子、」

「何よちょっとくらい寒いの我慢しなさいよ。すぐ入るんだから」

さっきまでの私の体温と紅葉が潜り込んで出来た熱で毛布の中はとても暖かかった。
少しの時間外気に触れて冷えてしまった足先がじわじわと温まっていくのを感じた。
本格的にまぶたが落ちていく。この分だとすぐに眠れそうだな。ああ、でもその前に。

「もみじー」

「、何ですかね、市子」

「あした、じゃないや、きょう朝ごはんよろしく」

「自分でこしらえなさいな、何で私がそんなことをせにゃならんのです」

「やだ、もみじのがいー。おいしいし」

沈黙。数拍遅れてとても優しげな声が頭上から聞こえた。

「そう、言われては作るしかないですねぇ」

一緒に吐き出されたのは果たして呆れだったのか。ぽん、と頭の上に置かれた手はゆるゆると髪を梳いていった。
何で髪なんか撫でてるんだろう。まあ、いいか。眠いし。

「おやすみ、もみじ」

「えぇ、おやすみ、市子」

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翌朝、眼の下にクマができた貧乏神が見れたとか。
(あんた大丈夫?)
(誰のせいでこうなったと…いや言わんとこう)

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