神様と遊ぶ。

□神様が寝起きドッキリを仕掛けてきた。reverse
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いやね、最初はほんの出来心だったんですよ。
二度寝ついでに潜り込んでドッキリしてやって、慌てる市子を「ぷーw」とか笑ってやる予定だったんですよ。

今何でこんな状態になってんだろうなあ……

神様が寝起きドッキリを仕掛けてきた。reverse


現在時刻。午前3時半を少し回ったところ。

現在地。市子の自宅。

現在地詳細。市子のベッドの上。

現在状況。市子とベッドでおやすみを交わして就寝体制。

「いやマジで何でこんな状況になってんの馬鹿なの阿呆なのドジなの?」

ドッキリとか考えてた私マジ死ね。
豆腐の角に時速350kmで突っ込んで頭割れて死ね。

ちらりと市子の方に目を向けると穏やかな表情で眠っていた。

先ほどまではおしゃべりに講じていたのだが、おやすみを言った瞬間に眠りに付いてしまった。
おしゃべりに講じていると言ったが、半分くらいは寝ていたようなものだった。
後半部分はあまり呂律が回っていなかった(まるで子供のようだった)し、喋っている内容もいつもでは言わないようなことばかりだった。

というか、残念美人てなんだ。
褒められてんの?貶されてんの?何であんなこと言ってきたの?
考えれば考えるほど思考がドツボに嵌っていく。

再度市子に目を向ける。
人の気も知らないですやすやと眠っている。

そっと髪を梳くと先ほどと変わらぬ手触りが返ってくる。私のものとは違ってとても触り心地がいい。
寝顔は安心しきっている子供そのもので。今さらながら何でこんな子供に自分が振り回されているんだろうと思った。

(もみじー)

普段では考えられない舌っ足らずな声音。

(やだ、もみじのがいー。おいしいし)

幸福エネルギーを奪うために毒でも入れてしまっていたらどうするつもりなんですか。
何でそんな風に柔らかく私を見て笑うんですか。

(おやすみ、もみじ)

何でそんな安心しきったように私のそばで笑うんですか。私の名前を呼ぶんですか。

疑問だとか疑念だとかそんなものを上げればキリがない。

ただひとつだけ分かっているのは、

「絆されて、しまったんでしょうかねえ」

この、人間に。桜市子に。貧乏神の私が。

「んっ、ぅ…」

「ゃべ、起きたか?」

慌てて撫でていた手を除けると、市子は少し身じろぎをして再び寝息を立て始めた。

「はー、私もいい加減寝ましょうかね。朝食の準備もありますし」

寝返りを打って市子に背を向けようとしたが、何かに引っかかってそれを阻止されてしまった。
よくよく見れば、市子がオーバーオールのすそをしっかりと掴んでいるではないか。

「なんというか、まあ可愛らしいことを…」






あれ、ちょっと待て。

今自分で何言った?

(可愛らしいことを…)




いやいやいや何考えてるんだ自分。
確かに市子は整っている顔をしているが、そういうあれではなくて、そうではなくて!

顔が熱を持ちはじめたのが分かった。いやまさかそんな馬鹿な。
これではまるで、まるで。
そこまで行き着いた瞬間、爆発的に頭に血液が集まって行った。
うわなんだよ自分絆されたどころじゃないじゃないか。

「嘘ぉ…」

二の腕を顔に押し付ける。チリチリとした熱気が顔に篭ってしまっているのが嫌でも分かってしまった。

「あーもう何でこんな面倒くさいことになったんですか」

どうしよう、眠れそうにない。
試しに掴まれている部分を引っ張ってみたが離す気配は全くない。
なんだこの生き地獄。

「はあぁ、もうどうしよ、」

ドンッ!

いきなり寝室には似つかわしくない鈍い音が響いた。
音の発生源は、大きく投げ出された市子の右足。

「あ?ぅわっ!」

耳のすぐそばを右ストレートが打ちぬいた。当たっていればただでは済まなかったハズだ。
起きているのかと思ってみれば、相も変わらず健やかな寝息。

そうだ、コイツ寝相めちゃくちゃ悪いんだった。

急いで掴んでいる手を外そうとすれば、凶悪な音を伴って繰り出される攻撃。
いや別に掴んでいてもいいんですけど!いやいや別にそういうことではなくて!



そうした一方的な攻防は明け方まで続き、結局私は眠れなかった。


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(はぁ、マジ眠い…)
(……紅葉もまだまだ青いな)
(オイ熊谷どういう意味だコラ)

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