神様と遊ぶ。

□吉日厄日。
1ページ/4ページ

天候は晴れ。気温も高くもなく低くもなく。
とても過ごしやすい平穏な一日を見事に壊してくれたのは日常クラッシャー1号の紅葉ではなく、意外にも嵐丸だった。

「お前らって本当に仲良いよなあ」
「……え?」

それは屋上でお弁当を食べている時だった。
唐突すぎる嵐丸の一言に、一瞬私は思考回路が停止してしまった。手の力が思わず緩んで摘んでいたおかずを落としてしまった。

「そうですわよねえ。学校にいる間は一緒に行動していない時がありませんもの。ねえ忍?」
「はい。桜様と貧保田様が離れてお過ごしになっているところは見たことがありませんね。お手洗いならともかく」
「おい何処見てんだ変態執事」
「ご安心を!桜様や貧保田様は私の範囲外ですので!」
「「失礼だなお前!!」」

あ、紅葉とハモった。

「とにかく!何で私とコイツが仲良いって言えるのよ!」

隣でお弁当を食べている紅葉を指さして言う。一体どこをどう見てそう言えるのか!コイツの普段の行動をよく考えてみろ!

「何でって…その弁当紅葉の手作りだろ?」
「ぼっは?!っ、な、何で分かるのよ!?」
「……何でと聞かれましても、それしか答えがありませんわよ?」
「おい飯粒飛んだんだけど」

汚いな!と言いながら私のスカートの裾で手に着いた私が吹き出してしまったご飯を拭う紅葉。
いや流石にこれは私が悪かったけど、何で他人のスカートで拭ってんだよ。
執拗に擦りつけてくる紅葉の手に一緒に持ってきていたハンカチを押し付けてやると、手やら顔に着いていたご飯を丁寧に拭いだす。

「あとは、うん、そういうのかな」
「えっどういうのよ」

そう返すと嵐丸はまるで奇妙な生き物を見るような目で眉を潜め、隣に座っている撫子に目配せをした。
撫子も撫子で同じように怪訝な顔をしてこちらを見やった。
もしや、と思い撫子の隣に立っている忍を見ても同じような視線を返された。
何なんだ。何であんたらはUMAを見るような目でこちらを見るんだ。

「ふむ、チュパカブラ市子ですか。悪くないですね」
「お前はさらっと人の考え読んでんじゃねーよ。つーかチュパカブラ選択するとか悪意しか感じないんだけど」

言っておくが、こんな貧乏神と仲良しだなんて勘弁してほしい。
隙あらば人の幸福エナジーを狙い、風呂に突っ込んできたり、夜中にベッドに潜り込んできたりとやりたい放題だ。
洗濯物は出すし、出したとしてもコスプレの服ばかりで肝心なオーバーオールは一度も洗っているのを見たことがない。(自分で干せよ。その前に汚い服で私のベッドに入ってくるんじゃない)
何が悲しくてこいつのモコモコ毛糸パンツ(季節を考えろ、季節を)を私が畳まなければならないのか、全くの謎である。

「あのねぇ、嵐丸。こういうのは仲良いって言うんじゃなくて、悪いっていうのよ」
「いやでもよぉ、一緒に市子の家に住んでるんだろ?」
「いやその前に許可した覚えもないし!」
「貧保田は市子さんの通い妻か何かですの?」
「すみませんうちのがご迷惑をおかけして」
「いえいえとんでもない、ご立派な方ですよ」
「ぅおおぃ!そこ何ノッてんの?!」

嫌がらせか!嫌がらせなんだな?!何なんだコレ。今日はびっくりどっきり嫌がらせバーゲンセールなの?
紅葉ならともかく、嵐丸たちまで一緒くたってどういうことなの…

「もう今日ホント厄日なんじゃないの…」

私のMP(メンタルポイント)が尋常じゃなくごっそり奪われていく。ふっと手を口元に寄せて、違和感。
ああそうだ、嵐丸が変なことを言うから吹き出してしまったんだ。紅葉の手からハンカチを取って口の周りを拭く。おし、綺麗になった。

「…ここまでくるとワザと見せているのではないかと思いますわ」
「私も同意したいですが、何分桜様は少々疎いところがおありですのでそれは無いかと…」
「疎いというかあそこまでくるともう天然だろ」

何なら私を見て3人がヒソヒソと話をしているが、無視だ無視。それを聞いてしまったらきっと私のMPは空になってしまうだろう。ただでさえ精神的ダメージを食らっているというのに、

「なー、市子」
「何よ嵐丸」

そう、嵐丸が爆弾発言をかますまでは。

「それ、紅葉と間接チューになってんぞ」
「はぁ?」

それ、とは、何のことを指しているのだろう?嵐丸の視線は私の手元に向けられていた。
左手。何もなし。
右手。口を拭いたハンカチ。

あれ、これさっき紅葉に渡したような…?というか、あれ?
このハンカチで紅葉が口元やら手やら拭いていたような。口元、を、
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ