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□ヤキモチ
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ロザリンドはタローの身体を慌てて受け止めると、あやすようにその後頭部を撫で始めた。
しかし、すぐ横でその様子を見ていたアデルの肩がピクリと揺れたのは、彼女の視界にさっぱり入っていなかった。
「ホラ、そんなに泣くでない。タローは男の子であろう?」
「だってぇ・・・」
「そんなに泣き虫では立派な余の家来にはなれぬぞ?良いのか?」
「・・・うー・・・」
ぐしぐしと涙を拭き始めたタローの可愛らしさにロザリンドは小さく頬を緩め、優しく彼の頭を撫でた。
「うむ、よしよし。タローは良い子じゃ。」
「・・・・・・」
ママはふと、二人の様子を見ながら何となく無言になっているアデルに気づき、チラッと彼の顔を見やった。
「・・・・・・」
アデルは何となく面白くないような、ムッとした表情を浮かべ、ロザリンドとタローの様子を見つめていた。
(あ〜らららぁ・・・。)
ロザリンドの先程のアデルに対するそっけなさが照れ隠しによるものだということはママもよくわかっていたが、あまりといえばあんまりなタローに対する扱いとの差に、さすがに少しアデルが可哀想に思えた。
普通ならここでさりげなく間に入って、ロザリンドとタローの距離を離したり、アデルにフォローを入れたりするところなのであろうが、ママはその場を眺めながら動こうとせず、にんまりと人の悪そうな笑みを浮かべていた。
その目は明らかに「面白いもの見つけた」という目だった。
確かに、アデルがヤキモチを妬いているところなど、滅多に見られるものではない。
(面白いからちょっと放っておいて見てましょっと。)
ココロの中でそんな黒い独り言を呟くと、ママは「さ〜て、晩御飯作りましょ。」などとわざとらしく言いながらその場を放置し、ルンルンと台所に向かって去っていった。