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□ヤキモチ
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「・・・え?」
「だからぁ、ヤキモチよヤキモチ!」
夕食の後片付けを手伝いながら、ロザリンドはママの口から出た思わぬ言葉に思わずきょとんと聞き返していた。
「要するにアデルは、ロザリーちゃんがアデルにはそっけないのにタローにばかりやっさし〜くしてたから、面白くなかったのよ、きっと。」
先程までのエピソードをママに話しながら、「何を怒っておるのじゃ、あやつは?」などとさっぱりわかってなさそうな口調で言っているロザリンドに、ママはついつい笑い出してしまった。
これだからこの二人は見ていて飽きないのだ。
「や、ヤキモチって・・・。タローは子供じゃぞ?・・・あのアデルがそんなヤキモチを妬くか・・・?」
「程度に差はあれ、妬いちゃうものよ、誰だって。相手が子供だろうと犬だろうと、好きな人が自分以外の相手に優しくベタッとしてたりしたら。まあ、あの子はカッコつけだから、あんまりそういう、自分が妬いてるところとかを見せたくないんでしょ。」
「・・・・・・」
きょとんとしていたロザリンドの頬が、ママの言っていることの意味を理解するにつれ、じんわりと赤くなる。
(・・・ヤキモチ?・・・アデルが?)
そんなことは、考えもしなかった。
(・・・余が、他の者にばかり優しくしたから?)
「・・・・・・」
思わずニヤケそうになる頬を、慌てて押さえた。
(わ、わりと可愛いところもあるではないか・・・)
何と言うか、まあ、悪い気はしない。
そんな表情がもろに顔に出ているロザリーを微笑ましい目で見つめながら、ママはニヤッとからかうような表情を浮かべて言った。
「まあ、そんなわけで、たまにはアデルにも優しくしてあげたら?」
「・・・え?」
「照れくさいっていうのもわかるけど、あんまりいつもつっけんどんにしちゃ可哀想よ。ねぇ?」
「や、優しくって・・・どのようにすれば良いのじゃ?」
「だから、普通に・・・。タローちゃんにしてあげてるみたいにとか。」
「・・・・・・」
その光景を想像してみたのであろう、ロザリンドの頬がまたさらに赤みを増していくのを見て、ママはにんまりと笑うと、ポンポンとロザリンドの肩を叩き、鼻歌交じりに台所を出て行った。
種を撒くだけ撒いて、後は面白がるというタチの悪いところは、悪魔化する以前からのもともとの彼女の性格なのであった。