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□天敵
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「・・・ふ。」
轟々と立ち上る煙を見つめ、ゼタはククッと笑いをもらした。
「フハハハハ!!見ろ!!我の怒りを少しは思い知ったか、プラム!!」
下等な魔神程度なら消し飛んでいるはずの衝撃だった。
魔王であるとはいえ、プラムとて無事では済まないに違いなかった。
・・・しかし。
「・・・・・・!!」
勝ち誇った顔をしていたゼタの顔色がにわかに驚愕に変わった。
その目の前には、髪の毛1本すら焦がす事無く優雅に彼の攻撃をかわしたプラムがフワリと降り立っていた。
(・・・馬鹿な。)
ゼタは顔を引きつらせながらプラムの顔を見つめた。
明らかに以前より力を増している。
2歳にして父親から魔界を奪い取ったというこの娘は、今もその魔力を伸ばし続けているのだ。
幼い身ですでにこれ程の力を持つプラムがこの先成長を続ければ、一体どれ程の存在になるのか。
未だ底の知れない彼女の潜在能力に、ゼタは少なからず動揺していた。
「・・・・・・ふふ。」
プラムは薄く笑うと、ゆっくりとゼタに歩み寄った。
「・・・・くっ・・・!」
(・・・これは・・・殺られる、か・・・?)
元の姿の時なら遅れを取る気はしなかったが、本の身になり、身動きすらままならない今の状態ではもう抗う術は無い。
悔しさに歯を軋らせ、ゼタは近づいてくるプラムをキッと睨んだ。
・・・しかし、プラムはひるんだ様子もなく平然と近づき、睨みつけるゼタをひょいと拾い上げると、そのままキュウと抱きしめた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
ゼタはしばらくの間、何が起こったかわからないような顔で絶句していた。
状況が飲み込めずに身体が固まる。
・・・頭上からは、プラムのクスクスと笑いを堪えているような声が聞こえていた。
「この魔界に来て、貴方の他にも気に入ったオモチャはたくさん見つけたけど・・・」
ゼタを抱えたまま目を閉じ、プラムは静かに呟いた。
「・・・・・やっぱりあなたが一番好きよ、ゼタ。あなたみたいに面白いオモチャ、他にいないわ。」
どこかの背徳者様が聞いていたらにわかに顔色を変えそうな大胆な台詞をさらりと吐き、彼女は再び楽しそうにフフッと笑った。
「・・・・・・」
プラムの言ったセリフの意味がよく理解できず、ゼタは「はあ?」という表情のまましばし考えてこんでいた。
脈絡も展開もさっぱりわからない
プラムはそんなゼタの様子には構わず、硬直している彼を抱えたままフワリと浮かび上がった。
「さ、早く戻りましょ。マオも心配してるみたいだったしね。」
「・・・!?ちょっ・・・待て!!またあの小僧の元に戻す気か!!?この魔界で、このまま我にあの小僧のメモ帳として余生を過ごせというのか!!」
「そうよ。・・・私がこの魔界に飽きるまではね。」
顔だけは無邪気な子供のようないい笑顔で、プラムはあっさりと答えを返した。