2
□天敵
7ページ/8ページ
(・・・一体、何故我がこんな目に・・・)
別次元の魔界で宇宙最強の魔王として君臨していたというのに、一体どこで何をどう間違ったのか。
楽しげに笑いながら自分を抱き上げて飛んでいるプラムを見上げ、ゼタは深い溜息を落とした。
もはやぐったりと力が抜け、怒りも霧消してしまっていた。
(・・・こいつにさえ、出会わなければ・・・。)
プラムにさえ出会わなければ、今でも宇宙最強の魔王として力を振るっていられたはずだったのだ。
(この小娘のせいでこんな本の姿に成り果て、ろくに身動きが取れずに格下の連中共にも舐められる日々。)
ゼタは眉間に深いしわを刻み、ギリッと歯をきしらせた。
(・・・だが、それでも。)
プラムと出会わなければ自分は、自らの驕りにも、サロメの密かな献身にも永久に気づくことはなかったのかもしれない。
そう考えると、何とも言えない複雑な気分になってくる。
「・・・・・・」
決してプラムに感謝するわけではなかったが。
ゼタはフウゥッと深い溜息を吐いた。
諦観にも似た感覚。
(・・・そうだ。・・・もう、こいつと出会ったこと自体が災厄のようなものなのだ。)
「天敵」。・・・そんな単語が頭に浮かぶ。
「マオには部屋のセキュリティを強化するように勧めておかないとね。またあんな雑魚に私の楽しみを邪魔されちゃたまらないわ。」
独り言のようにもらしたプラムに、ゼタは怪訝そうに聞き返した。
「・・・楽しみ?」
「そうよ。気に入ったオモチャは、やっぱり目の届くところに並べて置いて眺めていたいじゃない?」
「・・・・・・」
(・・・こいつが何を考えてこの魔界にとどまろうとしているのか不思議に思っていたが・・・。)
つまりは、あのマオという小僧が目当てだったというわけだ。
ゼタは再びフゥッと深い溜息をもらした。
(・・・運の悪い小僧だ。)
ほんの少しばかり、同情する。
この先、マオもまた永くに渡ってプラムに振り回されることになるのだろう。
そして、プラムと出会ったことをいつか凄まじく後悔するのだ。・・・ゼタと同じように。
自分と同じ災厄に見舞われたマオを思い、ゼタは無意識にフッと小さく笑みをこぼしていた。
(もう少しくらいは、あの小僧の元で過ごしてやってもいいかもしれんな。・・・同じ天敵を持った者同士。)
・・・そんなことを考えながら。
日々少しづつ、無意識の内に丸い性格になっていく自分の変化に、ちっとも気づいていないゼタであった。
終わり。