□軽いケンカと仲直り
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(まったく、まったく、まったく!!)

ベッドの上に座り込み、クッションをギュウッと抱きしめながら、ロザリンドは真っ赤な顔で拗ねていた。

(あのアホウ!愚か者!無礼者!助兵衛!!)

見られてしまった恥かしさが収まらない。

(レディの着替えを覗いておいて、何じゃあの態度は!!)

大体、女の部屋に入る時はノックくらいするのが常識というものではないか。

悪いのはアデルの方なのだから、引っぱたかれて当然なのだ。

「・・・・・・」

チラリと、先程彼を引っぱたいた右手を見る。

手はまだ少し痛かった。

思いっきり引っぱたいたのだから無理もないが。

「・・・・・・。」

・・・いくらなんでも強く叩きすぎただろうか。

一応彼は謝ったし、わざとでないのもわかっている。

先刻は咄嗟の恥かしさが先にたって、つい渾身の力で引っぱたいてしまったのだ。

「・・・・・・・」

(・・・い、いや、余は覗かれた側じゃぞ!謝る必要などない!!)

フンと息を吐き、目を閉じる。

どこかチクチク胸が痛むことに納得がいかず、ボフンとクッションに顔を埋める。

(・・・どうせ、時間が経ったらまたあやつの方から謝ってくるであろう。)

アデルの性格は、良くわかっている。

ケンカでお互いに意地を張り合うことになれば、必ずアデルの方から折れてくれるから。

(その時に、許してやれば良い。)

そう自分を納得させ、ロザリンドはゴロンとベッドに寝転がった。

(・・・・・・しかし。)

チクチクと胸を刺す痛みは変わらない。

放っておいても、いずれアデルの方から謝ってくるのはわかっている。

・・・けれども。


このまま、嫌われてしまうのではないか。

そんな小さな不安が胸をかすめる。


(・・・フン、馬鹿な。)

ツンと天井を仰いで、自分の心配を打ち消す。

(アデルが余を嫌いになることなど有り得ぬ。あやつは余のことが好きでたまらぬのじゃからな。)

・・・しかし。

嫌われるまでいかなくとも、こんな意地っ張りばかり続けていては、いずれ愛想を尽かされてしまうかもしれない。

惚れた弱みというものだろうか。

どうしてもそんな不安が頭をよぎる。

「・・・・・・・」

ロザリンドはゆっくりと身を起こした。

(・・・とりあえず。)

そっと右手の平を見つめ、溜息を吐く。


(・・・あそこまで強く叩いたのは、やはり余のやり過ぎであったな・・・。)
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