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□軽いケンカと仲直り
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「・・・・・・と。」
そっと居間のドアを開けて顔を覗かせたロザリンドは、目に入った赤い色にドキリと心臓をはねさせた。
ソファーにもたれ、腕を枕にしているアデルの姿が見える。
「・・・・・・。・・・オ、オホン。」
そっぽを向いて、気まずそうに軽く咳払いをしてみせるが、アデルはピクリとも動かなかった。
(・・・う・・・。)
やはり、まだ怒っているのだろうか。
少しばかり弱気になり、おずおずとソファーに近寄ると、ロザリンドは小さな声で言った。
「・・・・・・さ、先程は・・・余も、怒りすぎたかもしれぬ。」
「・・・・・・」
「・・・だ、だからその・・・お、お主が仲直りしたいというなら、してやっても良いぞ。」
「・・・・・・」
小さな声で言いにくそうにポツポツとロザリンドがセリフを続けても、アデルは黙ったまま何の返事もしなかった。
「・・・・・・!」
顔を赤らめ、ロザリンドはムウッと肩を怒らせた。
珍しく自分の方から折れてやったのに、何もシカトすることはないではないか。
「聞いておるのか、こ・・・!!」
そっぽを向いていた顔をアデルの方に向け、怒鳴りつけようとした瞬間、ロザリンドはポカンと口を開けたままぴたっと動きを止めた。
アデルは腕を枕にしたまま、穏やかな寝息を立て、ぐっすり眠り込んでいた。
「・・・・・・」
怒るに怒れず、ロザリンドは情けない表情をすると、カクッと肩を落とした。
ポカッと殴りつけて起こしてやろうかとも思ったが、慌てて思いとどまる。
ケンカを売りにきたのではなくて、自分は謝りに来たのだから。・・・とりあえず。
「・・・・・・。」
しばらくアデルの寝顔を見つめながら、ロザリンドは居心地が悪そうにきょろきょろと辺りを見回した。
寝ているアデルを起こすのも気が引け、かと言って彼が起きるまで側で待機しているというのも何となく落ち着かない。
・・・一応、ケンカ中なのだし。
辺りを見回しながら、ロザリンドはふと何かを思い立ったように腰を上げた。