小説
□始まりの場所4
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スタタタタッ
誰もいない大通りを走る一人の青年を、俺は見下ろしていた。
「右に行ったぞ!まだだぞ・・・今だ!飛べ!!」
タンッ
「うおぉぉぉりゃあぁぁぁ!!!」
青年の声を合図に、俺は雑居ビルの三階のベランダから、飛ん・・・いや、『落ちた』
ザシュ!!
キシャァァァァァ!!
スタン!
落下地点に追い詰められていた天使を、愛刀の『白河』で頭の先から股まで斬り裂いた。
しかし天使は、真っ二つにしたくらいじゃあ消えない。
その存在全てを消し去る程の力・・・
「止めだ!腐れ天使!!」
俺に指示を出していた人の右手がぼんやり光る。
その右手を広げ、天使に向かって突き出した。
「和田友也オリジナル!ウルトラハイパーデラックスジャンボ特盛り奥義ぃぃぃぃぃ!!『旭』(あさひ)!!!」
青年・・・和田さんの手のひらから、2メートル程の光の玉が出てきて、天使目がけて飛んでいった。
地面を削りながらも敵に向かう『それ』は、その存在を消し去るには十分すぎるほどの威力だった・・・
一つ、難を言えば・・・
旭と天使の直線上に、俺がいたことだろうか・・・
「羽蝶〜〜〜・・・」
ドン!!!!
天使を空気のように打ち抜いた旭は、やはりというか、当然というか・・・
・・・俺をも打ち抜いた・・・
かろうじて身体半分避けたおかげで、左半身を打たれるだけですんだ。
左半身を打たれた俺は、右足を軸にギュルギュルと回り、やがて回転がおさまるとバッタリと地面に倒れた。
「・・・そこにいると、危ないぞ?」
「・・・わ・・・なあ、う・・・な・・・(わかってんなら、打つな!!)」
まともに喋れない俺の言葉など気にするでもなく、和田さんは空間転移を解除した。
「ああいう時は、攻撃が当たるところに気流を集めればいいんだよ」
「・・・あれでも限界まで集めてガードしたんですけど・・・」
天使退治が終わると部屋に戻り、和田さんから気流や今日の戦闘の反省点等をレクチャーしてもらう。
俺が仙台に来てから、もう2年半にもなるが、初めてこの人とパートナーを組んだときは嫌で嫌で鬱気味になったものだ。