小説

□始まりの場所5
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「どうしたんですか、いったい?」



助手席に座った俺は運転席の和田さんへと顔をむける。



「ガソリン全然入ってねーし!しかも『ガソリン満タンにしておけよby沖凪』とか書いた貼り紙が!!」


「・・・和田さんの行動バレバレじゃないですか・・・」


「こうなったら、残りの燃料で行けるところまで行って乗り捨ててやる!!」


「やめ・・・うおっ!?」



言うが早いか、ギアを切り替え駐車場から飛び出す。



「ちょっ!和田さん!!法定速度!!」


「・・・?」



おい・・・まさか・・・



「なんだ?それ?」


「あんたどうやって免許取ったんだ!?」



俺の精一杯のツッコミもむなしく、車はどんどんスピードを上げる。



ギャギャギャギャギャ!



ドギュギュギュギュ!



ドガガガガ!



ピーポーピーポー



一瞬のような、永遠のような・・・



実際は5分程度だろうが、走っていると、ようやくパトカーが赤いランプを回しながら追い掛けてきた。



「和田さん!!頼むから止まってください!!」


「誰も俺を止められないんだ!!俺は、俺は風になるんだぁぁぁ!!!」


「風にでも何でもなっていいから、とりあえず俺を下ろせ!!」


「はあ〜はっはっは〜〜〜!!」


「笑ってないで話を聞けぇぇぇぇ!!!」



さっかみち〜、トンネル〜くさあっぱら〜♪



いっぽんば〜しに〜、でこぼこっじゃりみち〜♪



くものすくぐって〜♪



くだり、み、ち♪



「ラジオ止めろぉぉぉ!!こんな状況でなんでトトロだ!?」


「あ、る、こ〜♪あ、る、こ〜♪」


「歌うなぁぁぁぁ!!止まれぇぇぇぇ!!」



・・・



・・・



・・・あれからどれくらいの時間が過ぎただろう。



警察をまくために細い路地やらなんやら走り回り、いつのまにか市街地からぬけたようでまわりには田んぼや山しか見えなくなっていた。



「・・・どこですか、ここは・・・」



疲れはてた俺はとりあえず現在地を聞いてみる。



「それを俺に聞くか?」



あぁ・・・俺にもっと力があれば・・・



この人の暴走を止められたのに・・・



自分の両目に熱い何かが込み上げてくるのがわかる。



だが、決して泣くまいと決めた。



泣いたら負けだ!
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