小説

□始まりの場所5
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プスン、プスン・・・



「・・・?」



「・・・どうやら、ガス欠のようだな」



俺は泣いた。



先程の決心むなしく、俺は泣いた。



近年稀にみる、大泣きだ。



静かに、だが激しく、泣きまくった。



悲しいんだか、悔しいんだかもわからずに泣いてしまった。



「声も出さずに泣くなよ。気持ち悪い」



誰のせいだと思ってんだ、この人は?



うっすらと殺意がわいてくる。



キ・・・・ァ・・・



「なんか言ったか?」



俺は何も言ってない。



と、いうか、多分今はまともに喋れない。



キシ・・・ァ・・・



今度のは俺にも聞こえた。



キシャァァァァ



天使だ。



俺と和田さんは車から飛び出すと、辺りを見回した。



「羽蝶、どこだかわかるか?」


「・・・」



声が聞こえたときから探ってはいるのだが、おかしなことに天使の気配が全く無い。



「わから・・・ない、ですね・・・」


「おかしいよな・・・声が聞こえるくらい近くにいるはずなのにお前がわからないなんてな・・・」



ちなみに俺の天使探索能力の有効範囲は半径5キロメートルだ。



その範囲内なら正確な位置と距離が完璧にわかる。



それなのに・・・



キシャァァァァ



「避けろ!上だ!!」



和田さんの声に反応して、俺はその場から急いで避けた。



ビシィ!



今まで俺がいた地面に亀裂が入る。



バッ、と、上を見ると・・・



「な・・・に・・・!?」



そこには、十数体の天使が、俺達を見下ろしていた。



天使を黙視した途端、やっと天使の気配を感じられるようになった。



プルルルル、プルルルル



ピッ



「はい、和田です」



この状況でフツーに携帯に出てるし・・・



「はいはい、ふんふん・・・えっ?なんだって?ちょっと・・・もしもーし?」



どうやら電波が悪いようだ。



「もしもーし!もしもーし?もし・・・コスモース!?ん?いや、なんでもない。んで?」



コスモスって、なんだ?



ピッ



電話を切り、ポケットへしまう。



「天使が大量発生したそうだ」


「見りゃわかりますよ、そんなの・・・天伐隊からですか?」


「うん。至急応援にむかってほしいってさ」
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