小説

□夏色
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『・・・台風は、後2、3日中には、九州へと上陸し、猛威を振るうでしょう』


この時期になるとテレビから流れる台風情報。


『夏の風物詩』とも言えるが、あまりありがたいものじゃない。



毎年毎年、その被害は少なくはない。



僕の住んでいるところでは、それほどの被害は出ていないし、関係ないといえば関係ないし、顔すら知らない人が亡くなったと言われても・・・



それでも、人が死んだと聞かされれば、気分の良いものじゃないし、むしろ気がめいる。



そんなことを考えながら朝食をとっていると・・・



トゥルルルル・・・
トゥルルルル・・・



電話が鳴った。



「ちょっと、早く電話出てよ〜!」



台所から、お母さんの声がする。


「は〜い」



夏休みに、朝早くから電話がかかってくるとすれば、よほどの急用か、友達からの遊びの誘いだろう。



実際は後者だと思う。



ここ一週間で三回は今頃の時間にそんな電話がきていた。



「はい、もしもし。黒木ですけど・・・」



ウキウキしながら、しかし、電話はいつもよりトーンを落として出た。



「もしもし。朝早くからすみません。私(ワタクシ)、取之州といいますが、闇丸くんはいらっしゃいますでしょうか?」



「うわぁ・・・」


予想外の相手からの電話に、悲鳴にも近い声が漏れた。



今ので相手は、誰が出たのかわかったのだろう。



「お?闇丸か?俺俺!羽蝶!」



さっきまでの丁寧なしゃべり方ではない、いつもの羽蝶のしゃべりになる。



普段の羽蝶は、人前ではパーフェクト超人だが、僕の前だとムカつくくらい適当になる。



まあ、それには少しではあるが慣れた。



問題はそこじゃない。



「・・・お前、なんでオレん家の電話番号知ってるんだ・・・」



羽蝶には、家の場所も教えていないし(でも、最初に会ったときに、家の近くにいたから家は知っていたのか?)、電話番号も知らないはずなんだけど・・・



「電気とか、ガスとかの請求書は、細かく破くか、マジックとかで塗りつぶした方がいいぞ?個人情報の固まりだか「お前はストーカーか!?」



羽蝶の話をさえぎり、僕は続けた。



「しかも闇丸つってもオレ以外わかんねえだろ!?ほかのやつが電話出たら、取り次いでもらえねえぞ!?」
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