単発小説
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「え〜、突然ですが。転校生です。どうぞ!」
えらく適当な担任の案内の後、教室の戸が開いた。
「・・・転校生か・・・ハンパな時期に転校してきたもんだ・・・」
誰に言うわけでもなく、ボソリとつぶやいた。
夏休みも終わり、一月近くたとうとしているこの時期を、ハンパといわずになんというのか・・・
教室の中に入ってきた転校生。
それは、一言で言うと・・・
・・・可愛かった・・・
「これが、転校生です。自己紹介。ガキ共、聞け」
ワーキャー騒いでいた僕達生徒に向かって、担任が教職にあるまじき発言をした後に、転校生が口を開いた。
「戸部 アゲハ(トベ アゲハ)です。よろしくね♪」
教室中(おもに男)から歓声があがった。
どうやら転校生のアゲハに、一目でやられてしまったようだ。
大きな目に白い肌。
本来はロングであろうハニーブラウンの髪を左右で大きく結って、リボンで飾り付けている。
小さな顔とあわせてみると、セロハン紙に包まれたあめ玉のようだ。
「それじゃあ、戸部の席は・・・黒木!」
「は、はい!?」
もしかして、僕の隣に?
・・・そんな期待は、見事に打ち砕かれた・・・
「お前、一番後ろの席行け。戸部はアホが席空けるから、そこに座れ」
「なんじゃそりゃぁぁぁ!!」
僕は久々に大声でツッコんだ。
「しのごの言わずにさっさとどけ。お前はどうせ授業中寝てるだけだろう。目障りだ」
「あんた本当に教師か!?」
ピシューーーン・・・
カッ!!
担任の投げたチョークが、後ろの壁に突き刺さった・・・
「・・・どくのか・・・どかないのか・・・」
「どかせていただきます」
身の危険を感じた僕は、素直に一番後ろの席に移動した。
そして、あっという間に放課後になった。
アゲハは、休み時間になるたびにみんなから質問攻めにあっていた。
どこから来たのか、好きなものはなにか。
次の休み時間も、その次の休み時間も、アゲハはみんなに囲まれ、話をしていた。
同じような質問を繰り返し聞かれているのだが、アゲハは一つ一つの質問にきちんと答えていた。
アゲハはすでに、クラスに馴染んでいた。