闇の守り人

□裂け谷にて
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裂け谷―かの高名なエルロンド卿の治める、麗しきエルフが住まう地―と堅苦しい説明は後にしよう

今ここに所謂急患が運び込まれようとしている

解説は私マリウス・エイレーン………これから運ばれる彼を押しのけてこの物語の主人公になるつもりはないけど、まあ幅取らせてもらう予定

「グロールフィンデル様がお戻りになられました!」

『よっしゃあ行くか』

館は広いけどもう何百回と訪れているから慣れたもの
魔法を使わなくてもだいぶ足が速くなったから、風のように駆ける

やがて子供―年齢はそうではないが―を抱えた、美しい絹糸のような金髪を靡かせる壮年―こちらも年齢はそうではない―にぶちあたる

『グロールフィンデル、お帰り、無事で何よりだ、少し彼を診させてくれ、応急処置を少ししたい』

「マリウス……ただいま、良いが、あまり時間はないぞ」

グロールフィンデルと呼ばれた男は目を細め僅かに微笑んだが、すぐに厳しい顔へと戻った

『私の処置は早いことがウリだからね、エピスキー』

昔の面影はほとんど無い、箒ほどの大きさになってしまった杖を抱えられた者に翳すと幾分顔色が良くなったように思えた
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