きまぐれHP
□Sly Canary. 09
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「その必要はなかろう」
「どうして……!」
『それはまあ、私もまた生き残った男の子だからかな?』
「先生!クィレル先生……?ヴォルデモートは?」
後ろを振り返ると、若干煤けたマリウスがぐったりしたクィレルを抱えている
『あの人は居なくなったよ、がんばって説得したんだ』
「説得!?」
「ほっほ、あ奴も老いては子に従うということかの」
『そうしてくれるとありがたいんですけどね』
「やっぱり先生は、ヴォルデモートの……」
『それについては後で話そう、私も君も、長話をするには疲れすぎているよ』
マリウスに微笑まれると緊張の糸が切れ、一気に疲れが吹き出す
「あした、ぜっ、たい……」
倒れ込んだハリーを、ダンブルドアが抱き抱えた
ハリーが目を覚ますと、案の定そこは医務室だった
『おはよ、ハリー』
「おはよう、ございます」
ベッドの脇に座るマリウスはいつもの様に髪を縛ってはおらず、流れるままの金糸は、もともと中性的な彼の性別を更に隠すようだった
『それじゃあ、約束の話をしようか、少し長くなるから寝たままで聞いてね』
ハリーは無言で頷いた
『私もね、君と同じなんだ、ハリー』
「それは、どういう……?」
『私の両親は私が幼い頃、ヴォルデモート卿に殺された』
「えっ……?」
マリウスの父はヴォルデモートだと思い込んでいたハリーは面食らう
『ヴォルデモート卿は私の母を愛していたんだ、一方的にだがね……私の母の家系は純血で、代々スリザリンだった。闇の魔術にも関わりがあって……祖父や祖母は娘を……つまり私の母を差し出すつもりでいた、それが最大の忠誠だろうからね。』
「でも先生はヴォルデモートの息子じゃなくて、孤児になってるんですよね……?」
『そうとも、私の母は元々家があまり好きじゃなかったみたいで――これはダンブルドア先生から聞いたことだけど、ホグワーツ卒業と同時に姿をくらましたらしい』
『ここからはダンブルドア先生の推測に過ぎないんだが……私の母は魔法を封じてマグルの中で生きていくことで追跡を逃れたみたいなんだ、おかげで母方の一族は皆殺しになったみたいだけど』
伝え聞いたことばかりで実感がないんだ、とマリウスは笑った
『そんな母にも人並みの……そう、人並みの幸せが訪れるんだ、マグルの男性と結婚して、私が生まれた、喜ばしい事だが、赤ん坊の私は母のように魔法を抑えることは出来なかった』
「もしかして、それで……」
『母は見つかってしまったんだ、マグルと結婚したことでヴォルデモート卿は激怒して、2人を殺した。そして私も殺そうとした……らしいんだが、やめたんだ』
「どうして?」
『思い通りの娘を育てようと思ったみたい、残念ながら私は男だったんだがね、あ、これは本人から聞いたから間違いないよ』
「本人って……ヴォルデモート?」
『うん、話だけ聞くと……惨い話だ、けれど、私は……少なくとも私は、彼に育ててもらったし、愛して貰った』