夢見の書庫室
□…プロローグ
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楽しいと思えた時間
彼らと過ごす時は楽しくて哀しくて嬉しくて退屈しなかった
このまま時が止まってしまう事を信じてない神に祈るほど望んだ
でも……世界は優しくなんか無く……何処までも何処までも無情だった
一人欠けてしまったの……
彼の片割れで戦うのが大好きで常に戦場に立っていた子も……
彼をベクライターとしてもっとも信頼し親愛していた子も……
彼を親友と想い接して刀の戦いの師と慕っていた私も……
彼の死を悼みつつも……
自分の望みの為に生きている
彼の片割れはあの人のそばに常にいる事を選んだ
あの人は彼の片割れがそばにいる事を受け入れた
私は一人、離れて独りになった
そして、その日から数十年の歳月が流れて………
粉雪が舞う白き大地に紅が染める
「呆気ないなぁ……」
静かに呟くのは一人の女性
「もう少し、生きたいと思わなきゃ、あがけないのよ?」
その手に見たことの無いアーチ型の物で一本の弦が張られていた
そして、背には空の筒状の物……腰に小刀を携えていた
「そう言えば……彼らはどうしてるかしら?」
天を仰ぎ目を細める女性
「あの日以来……会っていない彼らに……」
踵を返して染まった紅から再び白に染まる大地を歩き始めた
「アヤナミとヒュウガに会いに行きましょう………雪風が導くままに……」
一陣の風が雪とともに吹き荒れた
そう欠けた一人の名はユキカゼ………