小説1 (男主)

□鈴の瞳に
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遠い昔を夢見ていた。それは初めて少年が黒龍と出会った日だった。

「あなたは……龍??」

「俺が怖くないのか?」

「ううん。怖くないよ?綺麗な顔だね…」

少年は鎖のはめられた手をゆっくりと龍の顔に触れていた。龍は黙って少年を見つめたままだ。

「前髪がそんなに長くて俺のことが本当に見えてるのか?」

龍がニヤリと笑いながら意地悪く言う。少年は頬を膨らませていた。

「見えてるもん!」

「ふ……じゃあ、その長い前髪どかしてみな?本当に見えてるか確かめてやろう」

「顔は見せたくないかな………」

「………何故?」

「きっと、気味悪がるから……」

「見せてもらわないとなぁ」

少年は渋々と顔を覆っている長い前髪を両手で持ち上げたのだ。明らかになった少年の瞳を見て龍は驚いていた。少年の瞳は鮮やかな深紅だった。少年は不安そうな瞳で龍を見ていた。気味悪いどころか愛らしい顔だった。

(この子は………!!)

「嫌いになった??」

「いや………自分の主をようやく見つけた。」

「?」

少年は龍の言ったことが理解できないでいた。そうしているうちに龍は少年に腕を出すように言い、少年の腕に軽く噛み付いたのだ。少年は痛みに顔を歪ませた。

「お前の血を貰った。これで契約は成立した……お前を此処から連れ出してやろう」

「本当に………?」


時は流れ、現在…


「おい鈴(リン)!そろそろ起きろよ」

青年は龍の背で気持ち良さそうに寝ていた。龍に起こされた青年は怠そうに身体を起こしていた。

「う〜〜ん。黒怜(コクレン)おはよう!!」

鈴は起きるなり黒怜と言う龍の首に抱き着いたのだ。急に抱き着かれて黒怜は驚いていた。

「おっ…おい!下に落っこちても俺は知らんぞ?」

今は上空を飛んでる最中だったのだ。それでも鈴はお構い無しだ。

「全く……昔のお前は何処にいったんだか……」

「調度今、昔の夢見てたんだよ〜♪こんなに元気になれたのも黒怜のお陰だよ。」

鈴はこれでも感謝してるんだからと言いつつ、首にぎゅっと抱き着いていた。

「やれやれ……」

鈴はニコニコと笑っていた。黒怜の言う通り、鈴は昔と変わり元気いっぱいに育ちよく笑うようになったのだ。たまに性格が荒くなるのは難点だが。鈴が地上の方に目を向けていた。

「あ〜!!街が見えてきたよ〜黒怜〜♪」

「あぁ。先ずは腹ごしらえからだな」

「おう!」

黒怜はゆっくりと街に近い林の所に降り立った。鈴はゆっくりと黒怜から降りた。

「到着だな」

「さてと………姿を変えるか……」

そう言うと黒怜の身体がみるみる小さくなってゆき、手の乗り龍ぐらいのサイズになっていた。

「いつやってもこの姿は好かんな……」

「いいじゃんべつに〜、可愛いしさ♪」

そう言いながら鈴は自分の手に黒怜を乗せる頭を撫でていた。

「いい度胸だ。この黒龍様を可愛いなんて言う奴はお前ぐらいだ」

そして二人は街に向かったのだ。


「う〜ん!賑やかな街だね〜」

(蝶光街(ちょうこうまち)は、それなりに賑わいがある場所だからなぁ。祭もよく行われるらしい)

「へぇ〜」

鈴が興味津々に辺りを見回していると底の悪そうな三人組の男が近づいてきたのだ。

「よう!あんた綺麗な顔してんなぁ。今暇かい?」

「俺達と遊ばな〜い?」

「断るのは無しだよ〜」

男が男にナンパされるのなんてごめんだ。最近こういう輩が多いとはこういうことかと鈴は思っていた。鈴は顔も身体も女の子みたいだからこういう類いの輩がよく近づいてくるのだ。

一人の男が鈴の腕を掴もうとしたが、鈴は素早くかわしたのだ。

「あんた達に構ってる暇無いんだけど?」

(そうだそうだ!!)

それを聞いた三人組が激怒していた。

「何だぁ、このうっさい子龍は!!おい……痛い目に会いたくなきゃ……」

と言いかけた男を蹴り飛ばしていた。

「お前よくも………!!」

「安心しなよ?腰の刀は抜かないどいてあげるから♪」

「言いたい放題言いやがって!!!!」

鈴はそう言われ腕を捕まれたが顔面に拳固を入れていた。残りの一人は震えて見ているばかり。

「まだやる?喧嘩なら買うよ?」

「ひっひぇ〜〜〜〜!!」

「覚えてろよ!!」

三人組はさっさと逃げていった。鈴はふぅっと息をついていた。黒怜と言えば鈴の肩の上でまだ怒っている。

(あの野郎、この俺様をコケにしやがって今度会ったら……)
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