小説1 (男主)

□鈴の瞳に
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(おぃ。何でやり返さなかったんだ?たかが見習いだろ?)

「こういう事にはなれてんだよ。話しだけて済むなんて可愛いもんだよ」

魔姫は苦笑いしながら鈴達を見ていた。

「俺達(邪教者)の間じゃ、喧嘩は殺し合いだったしな。手加減出来ないかもしれねぇだろ?」

「魔姫……」

(………)

「だから気にすんな!!」

そう言いながら笑っている魔姫の腕を鈴は強く掴んでいた。

「へっ??」

「はい、気にしませんなんて言う奴が居ると思う!?」

鈴は魔姫の腕を引っ張りながらその場を後にしていた。



「イッテ〜〜〜〜〜〜〜!!」

食堂で魔姫の叫び声が響き渡っていた。魔姫の顔の痣に消毒をしていた杏美が苦笑いしていた。

「魔姫、動かないで下さい。ちゃんと消毒出来ないですよ?」

「わかったよ〜………」

魔姫は渋々と大人しくなっていた。鈴は魔姫の隣に座りながら笑って様子を見ていると、暁がこっちに近づいてきたのだ。

「よっ!皆、おはよう!!」

相変わらず陽気な暁に鈴はニッコリしていた。杏美は暑苦しい奴といった態度だ。

「暁、おはよう♪」

「貴方が来ると騒がしくなって困ります」

「褒め言葉、ありがとう♪俺は周りを騒がしくするのが得意だからなぁ!!」

悪びれもなく言う暁に杏美は溜息をついていた。

「んで、蕾夭から鈴達へ仕事が来てるぜ?確か、夜桜屋敷からの依頼だな。邪教者が屋敷に紛れ込んだらしいとか」

(あの金持ちの屋敷か)

「そうだとも、黒怜♪こりゃ、報酬の見込みアリだな〜!!」

暁の言葉に杏美は頷いていた。

「そうですね。貰える所からは、きっちり貰っとかないと」

暁は笑いながら鈴の頭をポンポンと叩いていた。魔姫は杏美を、ぼーっと見て一言。

「暁はともかく、杏美って以外と金の亡者だな……」

「金の亡者とは失礼じゃありませんか?ここの生活費も馬鹿にならないのですよ?鈴達、頑張って来て下さいね?」

杏美がニッコリ笑いながら言う。

「うん!頑張って来るよ♪」

(鈴はやる気満々だな……。俺は面倒だ)

黒怜がそう言うと魔姫も頷いていた。

「俺も金持ちはどーも好ねぇんだよなぁ……」

そんな二人を見て鈴は溜息をついていた。

「黒怜も魔姫も、面倒だから好かないからで仕事は選んじゃ駄目でしょ?排除人は来た依頼はなんでもこなしますがモットーなんだからね♪朝ごはん食べたら直ぐに出発するよ!!」


鈴達は黒怜に乗り上空を飛んでいた。魔姫は鈴の後ろて大欠伸をしている。

「ふわぁ〜〜〜〜。なぁなぁ鈴、夜桜屋敷ってどんな所なんだ?」

「夜桜屋敷は名前の通り、桜が綺麗なことで結構ここら辺じゃ有名なんだよ?」

「へぇ〜」
黒怜は鈴達の話しに入ってきた。

「通称、桜の楽園と呼ばれている」

「なんだそりゃ?」

「着けばわかるさ」


夜桜屋敷。通称、「桜の楽園」とも呼ばれている屋敷の周りが桜に囲まれていることで有名な場所なのだ。
此処の当主が桜好きということで屋敷の周りを桜いっぱいにしたとか。

「今日も桜が綺麗だなぁ。君もそう思わないかね?」

彼の名前は桜之清蘭(おうのせいらん)此処の主だ。

「はい。とても美しいですね」

その隣にいるのは使用人の一人、美乱(みらん)
屋敷が大きい為に使用人が数えきれないほどいるのだ。その中でも美乱は使用人をまとめる中心人物になっていた。

「あっそうだ。今日、使用人が二人増えるから面倒見てあげてね」

「承知致しました」

清蘭は美乱に微笑むと、また桜の方に目を移していたのだ。


鈴達は夜桜屋敷に着いていた。
鈴は小さい姿になった黒怜を肩に乗せ周りに生えている桜を眺めた。
「うひゃ〜見てよ黒怜!!やっぱりここの桜は綺麗だね」

(確かにな)

魔姫は口笛を吹きながら感心していた。

「有名なだけはあるなぁ。驚いたぜ」

「でしょ!?」

鈴達が此処に来た理由は表上は新しく入る使用人という設定だった。
邪教者の排除は隠密に事を進めてほしいとの依頼主の清蘭から頼まれているのだ。
屋敷の玄関に近づくと使用人らしき人物が出迎えていた。

「お話は清蘭様から伺っております。私は此処の使用人を取り仕切らせてもらっております、美乱と申します」
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