小説1 (男主)

□少年アリス
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【アリスの日常〜1〜】





此処はトラップ王国。

おとぎ話しに出てきそうな国。

性別関係無しにトランプのタトゥーを生れつき持って生まれた者のことを何て言うかしってる?

皆からはアリスって呼ばれてる。

絶対的な力を持ち国で一番敬われ、妬まれている存在…………アリス。

アリスとして生まれてきた者は不老と千年を生き続ける。

以前のアリスは女だったが、今では男がアリスなのだ。

14歳の少年。人としてもアリスとしても、まだ幼い。

だが彼はいつも誰かに狙われている存在だった。

アリスを欲しい者、アリスの権力が欲しい者、欲望でいっぱいの輩達は絶えない。中には命を狙う者もいた。

いくら殺しても痛め付けても同じ輩は出て来るのだ。

キリがない。





今日もまた何人かの命が消えていく。

日常茶飯事。何で懲りてくれないのだろう?

男の喉が大きな鎌で貫かれていた。

命を無くした男が重く地面に落ちていく。もう見飽きた。

アリスは動かなくなった人間を見下ろしながら笑っている。

「喧嘩売ってきてこの様かよ。だっさ……」

アリスが立ち尽くしていると後ろに誰かが近づいて来たのだ。

アリスは彼の方をチラッと見る。

そこに居たのはアリスのチェシャ猫でありアリスの親友のリース。

チェシャ猫。アリスの身の回りの面倒を見ること、アリスを守る者として生まれてきた者。

頭には獣の耳が生えている。

リースは無惨に転がっている死体を見てアリスの方に顔を向けていた。

「何処に行ったかと思えば……相変わらずアリスは手が掛かるんだから」

心配したんだからと言った感じでリースは言う。

アリスはそっぽを向く始末。

「仕方ないだろ?コイツらが喧嘩売って来たんだからさ」

アリスはいつもそう言う。

そう言わなきゃやってられないのだろう。

でも、そのことを知っていてもリースは言葉が出てしまう。

「これでまた皆に怖がられちゃうよ?」

溜息をつかれたアリスは少し頬を膨らませながら不機嫌になっていく。

「一々うるさいなぁ」

このことはアリスが一番わかっている。

わかりたくなくても、わからなくてはならないことで。

「アリス、そろそろ屋敷に戻ろう?」

「へ〜い」

リースが亡きがらの片付けをせっせと終わらせる。

後片付けはチェシャ猫の仕事だからね。


アリスとリースは一緒に屋敷に戻って行った。





アリスの屋敷は街から少し離れた所にある。

街の人達が怖がらないで済むでしょ?

アリスに普通に接してくれる人も居るけど、ほとんどはアリスのことを怖がっているから。

屋敷の周りは人を拒むように木々や植物が生い茂っている。

こうすれば間違って人が入り込まなくて済むから。

不意にアリスのお腹が鳴った。その音に気づいたリースはくすりと笑う。

アリスだってお腹は空くものだよ?生身の人間なのだから。

アリスは恥ずかしそうにそっぽを向いていた。

「……空いた」

屋敷に入るなり陽気な声が聞こえてきた。

またアイツか………

アリスはその人物を見て不機嫌になる。

「お帰り〜二人共♪もう待ちくたびれちゃったじゃないかぁ」

タキシードを着た二足歩行の白兎が優雅に足を組みながら椅子に座っているのだ。

それも人の屋敷で。

アリスはまた来たのかといった感じで白兎を見ている。

「おい、白兎。人ん家に入り浸つなよなぁ。自分の家、無いのか?」

「あるはあるけど〜、アリスちゃんの屋敷の方が楽しいしぃ〜♪」

「ふ〜ん。どうせ俺の監視役だろ?」

アリスは刺々しい言い方をしてみせる。

だって事実なのだから。

白兎は肩を竦めながらリースの出してくれた紅茶を飲む。

「アリスちゃんってば、監視なんて言い方ヒドイじゃない」

白兎は大袈裟に耳を垂れ下げて眼を潤ませながらアリスを見ていた。

アリスが言っていることは事実だから仕方ないのだけどね。

白兎の役目はアリスを監視することだから。用事が無い時は極力アリスの前に現れることはない。

でも今回のアリスに限っては特別。

だから監視だけではなくて、個人的にアリスに逢いたいという気持ちで此処に来ているのだ。

アリスは白兎に対して刺々しい言い方をする。

別に嫌いな訳ではないんだよ?

ただ白兎にどう接すればいいか、わからなくなるだけで?
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