short

□la vie en rose
3ページ/12ページ


小さな薔薇園の一角。
薄ピンクの薔薇が咲くその場所でリボーンは足を止めた。

傍にある白い小さなベンチを見つめると
ふわりと揺れる蜂蜜色の髪が浮かぶ。

数年前、偶然に立ち寄ったこの小さなホテルの
小さな薔薇園で、リボーンはツナという青年に出会った。


青年の本当の名は沢田綱吉、と言った。
ふわりとした蜂蜜色の髪。
肩よりも僅かに長い髪は後に一つに束ねられ
結びの赤い紐が、纏う淡黄地の着物によく映えていた。

白い肌に小さな顔。琥珀色の大きな瞳。
年齢は25歳と言っていたが
その容姿と小柄な体格なせいか
とてもじゃないが少年にしか見えず
年齢を聞いた時は自分よりも年上か!?と驚かされた。

彼の纏う柔らかな雰囲気は少しも男性的ではなく
加えて、ふわりと笑う笑顔に俺の心臓は高鳴った。



俺が初めてこの薔薇園に足を踏み入れたとき
ツナは白いベンチに座り、薄ピンクの薔薇を眺めていた。
このイタリアの地で着物姿というのが珍しく
興味を引かれた俺は、思わず声をかけていた。

全身黒尽くめで、明らかに一般の人間では無い空気を纏う俺を
あいつは訝しむでも無く、あっさりと受け入れた。

互いに名を名乗り、適当な世間話。
俺の素性については意識して語らなかったが
あいつも敢えて探る様な事はしなかった。
それにも俺は好感を持った。

ツナは人と話す事は嫌いではないらしく
けれども饒舌でもなかった。
ほわほわとした雰囲気でアイツが話す
日本の文化や伝統の話は面白く、その声は心地良かった。

逆に俺はイタリアの事を話して聞かせた。
幼い頃から体が丈夫ではなく、日本に居た頃から
あまり外を出歩いた事の無かった彼は
イタリアに来ても同様で、彼の世界は
この小さな薔薇園とホテルの周辺だけだった。

ツナは俺の話を興味深く聞きながら
楽しそうに嬉しそうに笑った。

「俺も、見てみたいな」

リボーンと同じ世界を

「見せてやるぞ?一緒に来るか?」

ツナは淋しそうに笑い、首を横に振った。

そして 琥珀の瞳で俺を見つめると


「ねぇ、リボーン」

リボーンは ------- 恋したことある?



それがツナとの最初の出会いだった。

→ next
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ