short

□華には花を
1ページ/2ページ

「これを届けてくれ」

届け先は--------
差し出された小さな紙に書かれた住所を見て
青年は大きな瞳を瞬かせ 抱えた深紅の花束から視線をあげた。

黒のスーツを身に纏い優雅な動作で黒の中折れ帽を僅かに引き上げる。

驚きに見開いた大きな琥珀色の瞳を黒瞳に映し

名前は

「沢田綱吉」

そう告げると形の良い唇にニヤリと笑みを浮かべた。

外からの柔らかな風に蜂蜜色の髪がふわりと揺れる。

「・・・・・はぁ・・・」

青年は脱力し肩を落とした。

「・・・リボーン・・・俺、花屋なんだけど」
「知ってるぞ。ここはお前の店だしな」
「だったらこれは何の冗談だよ!?新手の嫌がらせか!?」
「別に冗談でも何でもないぞ?しいて言うなら、愛情表現?」

長身の美丈夫が小首を傾げた。

「そうゆうのも似合うなちくしょー!!って、なんで疑問系!?
 だったらせめてウチで花買えよ!その方がよっぽど愛を感じるだろ!」
「なんだ愛情不足か?ったくワガママなヤツだな」

はぁ、と息を吐くとツナの腕を引き寄せた

「うわっ!ちょっ、なに!?」
「行くぞ」
「どこへ?」
「ホテル」
「なんでぇ!?」

「愛情が不足してるんだろ?たっぷりねっちょり補充してやる」

ニヤリと浮かぶ妖艶な笑み。
あ〜ヤバイ・・・
警報がガンガン鳴ってるー・・・って鳴るの遅いよ!俺の警報!!

自分にツッコミを入れている間に気がつけばすでに店の外で

「イヤだー!離せぇぇ〜〜!!!」
「煩いぞ。そんなに騒いだら無理矢理みたいじゃん」

拗ねたように唇を尖らせる

「『じゃん』って言った!?
 (へ〜、そんな顔もするんだ。可愛いかもv)って違うから!
 しっかりはっきり無理矢理だろ!!」

ツナは掴まれた腕を振り払いリボーンを睨んだ。
頬を朱に染め上目遣いに睨む綺麗な琥珀色。
蜂蜜色の髪が風にふわりと揺れ、彩る花とは違う甘やかな香り。
リボーンは目を閉じ、ゆっくりと瞼をあげた。

「・・・・・ツナ」

低く静かな声音。それまでとは違う真剣な表情。
漆黒の瞳が琥珀を映し、誰もが魅入られる綺麗な顔に
憂いを含んだ笑みが一瞬浮かび

「俺が嫌いか?」
「えっ?」
「そんなに俺の事が嫌いなのか?」
「え、あ、それは・・・」

琥珀の瞳が戸惑い揺れる。

「俺はお前が好きだぞ」
「!」

長い指先がツナへと伸ばされ愛しむように頬を撫でる

「愛してる」
「!!!!!!!!////////////」

ツナの顔が抱えた深紅の花束よりも赤く染まった

瞳の前に広がる漆黒。
甘やかな彼の香りに包まれ低い声音の囁きが
耳元に繰り返される

「ti amo」「愛してる」と。

「ツナ、返事は?」

漆黒の双眸に捕われ

「----- お、おれ、も・・・////////」




「よし、デートだぞ」

ニヤリとそれは綺麗な笑顔で
「さっさと店を閉めろよ」と言いおき
ご機嫌に車へと向かう男の後姿を眺めながら

やられた・・・と

人生最大の後悔を慰めるように
抱えた薔薇の花が風に優しく香った

next → あとがき
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ