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□Destra Vongole ? その1
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窓の外に広がる青。

刷毛で描いたかの様な雲は初夏の風にゆっくりと流れ
今日という日がとても素敵な日になるのではと
そんな乙女的思考が芽生えそうな一日の始まり。

屋敷の一室にはそんな乙女的思考とは無縁の
(むしろ縁があったらめっちゃキモ!)な
黒服の男達が長テーブルに座していた。


「ねぇ、なんでいつも僕の隣に南国果物が置いてあるのさ」

臭いんだけど、とシッシと手を払う雲。

「クフフ、また鳥篭から勝手に抜け出て来たんですか?
 全く学習能力がないと言うか。
 頭が悪く躾のなってない鳥は困ったものです」


独特の笑い声で挑発する霧。


「君こそさっさとキッチンに戻りなよ。
 何なら潰してジュースにしてあげようか?」


毒にしかならないだろうけど。


「君こそ唐揚げにしてあげますよ」


トンファと三又槍を構える二人。
そんな二人を向かい側の席から笑顔で眺め


「朝から元気なのな〜」

「てめぇは暢気過ぎんだよ!」

「あはは。で、これやってくんない?」

「あぁ!?
 なんで俺がてめーのネクタイ結ばなきゃなんねぇんだよ!」

「苦手なのな〜」

「知るかぁぁ!いい加減覚えやがれこの野球馬鹿!!」


笑顔で首に下げたネクタイを両手に持ちヒラヒラと振る雨に、果たすぞ!?とダイナマイトを持ち出す嵐。

「俺は極限覚えたぞ!」

「自慢することじゃ・・・」

どうだ!とばかりに胸を張る晴に
雷の子供はボソリと呟いた。


「--------- てめぇら、いい加減にしろよ」


低音が響きボルサリーノに隠れた額に幾つもの青筋が浮かぶ。

朝から煩せぇんだよ!と銃の引鉄を引く寸前、パタパタと廊下に響く耳慣れた足音に
男は視線を扉へと向けた。


バン!と勢いよく扉が開き


「ごめんね!」


少し高めの声が響いた。


ふわふわと揺れるハニーブラウン。
ハァハァと息を切らしながらも琥珀の瞳を部屋中に巡らせると
「お、遅れて、ごめんなさい;;;」と、申し訳なさそうに眉根を下げ微笑んだ。

憂いを佩びた微笑。

うっすらと朱に染まる頬。

薄ピンクの唇から漏れる熱い吐息。

主ラブ!な彼等にはボスの纏う白いスーツもピンクにしか映らず、場の空気が一瞬止まった。

「じ、じ、じゅうだいめぇぇぇぇ!!!!!」


最初に我に返ったのは彼の右腕だった。


叫び風のごとく駆け寄ると


「だ、大丈夫ですか!?苦しいですか!?
 いますぐ医療班を!!!!!」と

部屋を飛び出そうとする男を
ボンゴレ10代目----- 沢田綱吉は慌てて止めた。


「は、隼人!;;;だ、大丈夫だから」

「ですがそんなに息を乱されて・・・」


息を-------- 乱す!?


自分の言葉に再び不埒な思考と妄想の世界へと旅立ち


「いや今走ってきちゃったからね、病気とかじゃないからー!;;;」


そんな綱吉の言葉も絶賛妄想中の彼には届かず


「ちょっと休めば落ち着くから。大丈夫だから。ね?」


心配してくれてありがとう、とニッコリと笑った。

殺傷力の高い天使の微笑みは、とどめ!とばかりに妄想界の扉を砕き
獄寺は顔を真っ赤に染めクッと鼻を押さえ片膝をついた。


「は、隼人!?」


突然の事に慌てる綱吉の肩にポンと手が置かれる。


「あはは。獄寺、まだ朝だぜ?」


あ、朝だから?男だしなー。とサラリとセクハラまがいな言葉を発しながら笑顔を振りまく男。

「や、武?;;;」

「んーツナはこっちに居ような〜」

可愛いピンクのスーツが血で汚れちゃもったいないじゃん?

せっかく似合ってるのに。

そう言ってさりげなく綱吉の肩を抱き獄寺から遠ざける。

「へ?いや、俺のスーツ白なんだけど・・・って血で汚れるって、なに?どっかと抗争!?」


なにも聞いてないんだけど!俺ボスなのにーー!

「ちょっと、僕の綱吉に触らないでくれる」

何時の間にやら側へと来ていた雲が山本にトンファを突きつけた。

「き、恭弥さん!?」

「綱吉。僕が君をストーカーや腹黒くろ助達から守ってあげる」


だから安心して身も心も預けて。


「身もって、むしろぜっんぜん安心できないんですけど;;;」


ストーカーって誰?
腹黒くろ助って何者!?


「クフフ、鳥如きが何を言ってるんですか。
 綱吉君を守るのは僕です。あぁ、でも血塗れにもしてみたいv」


バン!と骸に向け銃弾が飛んだ


「ふざけんなよ。ツナを濡らしていいのは俺だけだ」

「いやいや違うし、なんか漢字?ニュアンス間違ってるし!」


あぁ・・・もぅ、訳わかんない・・・・・


寝坊しダッシュで会議室へと着いてみればこの有様。


「そうだよ!今日って会議で集まったんじゃん!」


会議しましょー!、と叫んだ声は
既に始まった守護者と教師の抗争に掻き消された。

力無く座り込む綱吉の肩がポンポンと叩かれる


「沢田、今日の会議は無理だが、そう気を落とすな」

「お兄さん・・・」


珍しくまともな了平の言葉と優しい笑顔に思わず涙が溢れ


「ボンゴレ。俺が美味しい紅茶入れてあげますね」


ちょとだけ大人になったランボの心遣いに


「うん」


三人はそーっと戦場を後にした。



爽やかな初夏の青空の下

氷付けのオブジェが庭に並ぶのは数時間後・・・

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