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□Destra Vongole ? その2
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漆黒のスーツに同色の帽子。
ボルサリーノと呼ばれるそれを目深く被り顔を伏せた男は
幅広の廊下の中心に進めていた早足をふいに止めた。

廊下の真ん中に佇む男が二人。

「? 何してやがんだ?」

訝しげに小さく呟き、綺麗に磨かれた靴先が一歩を踏み出す。

「おい」

佇む黒服の男二人に険を含んだ低声で声をかけるが
男達は放心状態といった感じで何かを呟いている。

-------- 変なクスリでもやってんじゃねぇだろうな

此処は裏社会最大イタリアマフィアのボンゴレ邸。
その邸内にしかもボンゴレの部下がご法度の薬に手を出したとあっては
例え現ドン・ボンゴレの元家庭教師で現在は相談役でもある彼でなくとも
見過ごす訳にはいかない。

最強ヒットマンは愛銃を取り出すと手近の男へフレームを向けた。

トリガーに指を掛け、返答によっては辞世になるかも分からない
男の声を聞こうかと思ったその時
その男の口から呟くように零れた言葉に動きが止まった。

「ボス・・・////////////////」

甘さを含んだ声。よくよく見れば顔は僅かに朱に染まり
恍惚とした表情。その頭の中に浮かぶのが己の最高傑作であり
可愛い可愛いあの愛弟子、なのか?。

理解した瞬間、額に幾つもの青筋がピキピキと浮かび
全身からは誰もが震え場が凍りつくような殺気が放たれた。

「ふざけんじゃねぇ!」

パンパン!---------
幾度か銃声が邸内に響き漆黒のヒットマンの足元には
二人の男が無残、否、無様にも倒れていた。

無謀にも銃を放ったとは言え、そこは最高のヒットマン。
怒りに任せボンゴレの部下を邸内で殺すわけにはいかず
(実際、殺される理由がない)
威嚇(憂さ晴らし)の為に撃ったのだが
正確には漆黒の放つ殺気に耐え切れず気絶していたのだった。











「ツナ!!!」

バン!と轟音と共に執務室の扉が蹴破り壊され
ツナこと現ボンゴレ10代目沢田綱吉は驚き顔をあげた。

「!?リ、ボーン!?」

琥珀色の瞳を見開き声も出ない綱吉の元へと急ぎ近づくと
机にバン!と両掌をおき地の底から響くが如き低音で問い掛けた。


「てめぇ、なにしやがっ・・・・」

「た」と最後の言葉を口にする前に漆黒のヒットマンは固まった。

黒の双眸を見開いた男の前には、不安に揺れる琥珀色の瞳。
フワフワとした蜂蜜色の髪。
そして肩よりも長い、いつもなら胸元辺りに流れるだけの蜂蜜色が
なぜか今日はくるんとしていて・・・

くるん!?

我に返ると思わずそのくるんを指差した。

「なんだその髪は!!」
「へ?」

指差され綱吉は自分の胸元の髪を掴み持ち上げた。

「ああ、コレ?なんかさー朝起きたらこんな風になってて
 どうやっても直らなくてさー」

くるんと綺麗な縦ロールの先を摘み苦笑する。

「俺クセっ毛だからかなぁ?」
「んなわけあるかー!」

思わずリボーンはツッコんだ。

どこの世界に寝癖で髪が縦ロールになるヤツがいる!
しかもどこのお人形さん?と思えるほど
それは綺麗に巻かれていて、あり得ない程に似合っていて

-------- めちゃめちゃ可愛いじゃねぇーかーーーー!!!

「ッ、・・・アイツらはこれが原因か」
「あいつら?」

何の事か分からず綱吉は首を傾げた。

--------- 喰われてぇのか?

獣な思考を巡らせつつも、リボーンはなけ無しの理性を総動員した。

「・・・てめぇのせいで大変なんだよ」
「えぇ!?俺なんかした!?」

今日と言う日が始まってまだそう時間は経っていない。
その僅かの間に何をやらかしたのだろう?
綱吉はあまり良くない記憶力をフル稼動し朝からの行動を思い返した。

リボーンは、う〜んと悩むボスの姿を見ながら
此処に辿り着くまでにこしらえた屍もどきの部下達を思い返し
うんざりと顔を顰めた。

-------- この超童顔ド天然誑しが!

そしていまだ絶賛お悩み中のボスをどうするか、と思い
ふとリボーンは気がついた。
屍もどきに含まれていないのは当然として
まだ今日は最悪メンツに会っていない事を。

幹部という名のボス親衛隊であり守護者という名のセクハラ集団。
(自分のことは棚におき)

「・・・まずいな・・・」

確か今日は護衛には俺が居るからと皆を任務に出した筈。
あのストーカーは最後まで渋ってたが・・・。

小さく呟くと綱吉の腕を思い切り引いた。

「えっ、なに?」
「いいから、てめぇはその頭を何とかしてこい!」
「や、だから直らないだってばー;;;」
「頭からシャワーをあびりゃー直んだろうが!」

どうせコイツの事だ。
寝坊してシャワーを浴びる暇も無く此処に来た事など容易に想像がつく。

渋る綱吉の手を引き破壊された扉の前まで行くと知った気配に舌打ちした。

「チッ、遅かったか」
「え?」
「じゅーだいめー!獄寺隼人ただいま戻りまし・・・」

デジャブとも思える最後の言葉を告げない右腕の姿に
リボーンは視界を遮る様に綱吉の前に立ちはだかった。

「な、な、な、・・・」

意味不明の言葉を発し、器用にも咥えられたタバコが
口端でピコピコ動く。

「お帰り、隼人。ご苦労様〜」

リボーンの背後からひょっこり顔を出し
ニッコリと微笑む。くるんとした髪がふるりと揺れて

「お、お、お可愛いです過ぎますぅぅぅぅ!!!!!!」

変な日本語を叫びお約束通り出血した。


この後、それは素晴らしいマフィア情報網のおかげか
守護者はもちろんのこと、ヴァリアーやらアルコバレーノやら
跳ね馬やらが邸に駆け付けたのは、また別の話。

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