short
□la vie en rose
2ページ/12ページ
暫く走ると森が見えてきた。
それを迂回するように走ると
窓から入る風が涼やかさをまし
もう目的の場所が近い事を告げる。
碧の水面がキラキラと光りその眩しさに
黒の双眸を細めた。
澄んだ碧の湖の向こう、漸くその家が見えると
男は嬉しそうに口元に薄く笑みを浮かべた。
「いらっしゃい、リボーンさん」
東洋人の小柄な女性は
リボーンと呼ばれた青年の顔を見ると
とても嬉しそうに笑った。
「また世話になるぞ、奈々」
青年も言いながらボルサリーノを取った。
漆黒の髪に同色の双眸。
こんな田舎でなくとも滅多にお目に掛かる事の無い美青年。
リボーンは奈々から僅かに視線を外し
彼女の後ろに置かれた小さな写真立てを眼にすると
----- 来てやったぞ
小さく呟いた。
「はい鍵。お部屋はいつもの所ね」
「Grazie」
リボーンは鍵を手にすると、部屋へと向かった。
扉を開けると、ふわりと風が吹き
白いレースのカーテンが舞った。
清潔感のある白い壁に茶のチェスト。
小さなテーブルと椅子に
丁寧にメイキングされたベッド。
リボーンは上着を脱ぎ椅子にかけると
窓から外を眺めた。
視線の先には碧の湖面。
そして僅かに視線をさげると
其処には綺麗に手入れされた小さな薔薇園があった。
今年も来てやったぞ
「ツナ」
リボーンは愛し気にその名を呟いた。
→ next