夢また夢
□堕ちる
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押し倒されたらしく床の感触が伝わってくる。
「こんなに好きなのに、何故分からないんです?」
その顔は男の表情をしていた。
それに紅朱は本能的に恐怖を感じた。
なんでこうなったかは、自分でもよくわからない。
「…わかった…キス、するから」
何故かそう言っていた。
高遠は身体を起こし、紅朱も起き上がり乱れた服を直した。
「早くしてください」
高遠はイラついたように言う。紅朱は震える身体を抑えて高遠に唇を重ねる。
唇を離そうとすると、高遠に抱きしめられさらに深く口づけられる。強引に侵入してきた舌を拒めずにされるがままになっていた。
やっとのことで唇が離されると、酸素不足で頭がくらくらしていた。
「何で泣くんですか」
「え…?」
紅朱は頬に伝うあたたかいものに気付いた。
「そんなに、私のことが嫌いですか?」
高遠の声が微かに震えている。
「嫌い…じゃないよ」
紅朱は高遠の背中に手を回した。
「でも、完全に好きなわけじゃないから…」
そう言いながらも高遠の胸に顔をうずめる。
「だから、わたしを惚れさせてよ。高遠さんと同じくらい好きにさせてみて」
高遠の紅朱を抱きしめる手に力が入る。
「えぇ。惚れさせてあげますよ。狂うくらいに、ね」
end-