夢また夢

□薔薇のしあわせ
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紅朱が家の玄関を開けた途端に、バラのいい香りが鼻腔を擽る。

リビングに行くと、大量のバラが散らばっていた。

「ああ、紅朱。お帰りなさい。
すみません。こんなに散らかしてしまって。棘の手入れをしていたもので」

高遠はいったん手を止めて、バラをどかした。

「あ、ただいま。こんなにたくさんのバラどうしたの?」

「私の庭で育ててたやつを、摘んできたんですよ。なので棘の処理を…あ、紅朱。それは」

「ん?…いたっ」

紅朱が不意に手に取ったバラは、まだ棘の処理が出来ていないもので彼女の指先を傷付けた。そこからはバラの赤に負けず劣らずの紅い血が玉になっている。

「大丈夫ですか?少し見せてください」

高遠は紅朱の手を取ると、傷付いた指先を口に含んだ。

「え?ちょ、高遠さん…」

「我慢してください。これが手っ取り早いので」

第一関節を甘噛みされ、唇で挟まれる。極めつけは、傷口を舌で撫でられた。

「…こんなものですかね」

そう言うと咥えていた指を解放するが最後に傷口にキスをした。

「な、た高遠さん!」

「顔、真っ赤ですね。可愛い。
さぁ、血は止まったようですし、絆創膏を貼ってあげますよ」

高遠は何処からともなく、パッと絆創膏を出し優しく指先に貼った。

「あ、ありがとう…」

「どういたしまして。気を付けてくださいね。美しいバラには棘がありますから」

穏やかに微笑んだ高遠は、紅朱の頭をぽんぽんと撫でた。


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