夢また夢

□背中
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目が覚めると少し離れた位置に高遠さんの背中が見えた。

ずりずりと移動してその背中にぴったりとくっつく。

温かい体温と聞こえてくる心臓の音にほっとする。

「……」

「ん……紅朱?」

低く掠れた声がして高遠さんがこっちを向いた。

そのまま腕が背中に回り込む。

「あ、すみません……起こしちゃいました?」

「大丈夫ですよ。あなたこそ、身体大丈夫ですか?」

高遠さんの手が労わるように腰を撫でる。

「……大丈夫ですけど……」

その撫で方は止めて欲しい。

思わず身を捩ると更に密着してしまう。

「積極的」

「ちがっ……もう、知りません」

笑みを零した高遠さんから離れてごろりと背を向ける。

「逃げなくてもいいじゃないですか」

「高遠さんの触り方がやらしいんです」

「まぁ、逃がしませんが」

お腹に手が回りぐいと引き寄せられる。

「今は……まだこんな時間か」

高遠さんが片手を離して携帯を見る。

まだ夜中と言っていい時間で、もうひと眠り出来そうだ。

「……ふぁ」

「眠いですか?」

「ん……眠いです」

欠伸で浮かんだ涙を擦るときゅっと引き寄せられる。

「こっち向いて」

「やです」

「紅朱」

耳元で囁くように言われて思わず肩をすくめる


肩を引かれ仕方なく寝返りを打つと、おでこにキスが落ちる。

「おやすみ」

「……おやすみなさい」

無駄に優しい響きでそう言われて、頬が火照るように熱くなるのを感じながらも目を閉じた。


end-
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