図書

□竹谷の頭髪でもりあがってみた
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 忍術学園・昼休み、食堂。
 休み時間も残すところあと半分。五年在席の久々知兵助、鉢屋三郎、不破雷蔵の三人の昼食も談笑しつつ、残すところあと半分以下となっていた。
「おばちゃーん、何でもいいから残ってるほうのランチー」
 疲れきった声が段々と近づき、のっそりと竹谷八左ヱ門が現れる。そして学友の三人を認めると、
「よー、お疲れー…」
 片手を挙げてへらりと笑む。普段の彼らしくなく落としきれない疲労が滲み出ていた。同様に装束にも落としきれていない埃や塵が付着している。
「お疲れさん」
「やけにボロボロだな」
「無事、片付いたの?」
 鉢屋、久々知、不破の順に、それぞれから声をかけられた竹谷は、おばちゃんから受け取ったランチを手に、少し奥に詰めた久々知の隣に腰を下ろした。
「いやー、参った参った! 三太夫が逃げ出してさ」
 ぱん、と両手を併せて「いただきます」。ようやっといつもの調子に戻ったようで、食事を前にして元気になるとは、現金なものだ。
「三太夫? 何、新入り?」
 最後の豆腐を味わいながら久々知。い組の彼は、竹谷が授業終礼と共にやってきた生物委員会の下級生に連れられて行ったことを知らない。
「この間捕まえた蝮。まだ慣れてないからさ、迷惑かけちゃうだろ?」
 煮魚の骨を取り除く傍ら、返答する竹谷。
「毒蝮の……三太夫…?」
「なにそのギリギリ感漂うセンス」
「いいんじゃない? 丁度再放送もしてるし」
 一足先に昼食を終えた三人は、食器を返却すると、そのまま立ち去りはせず再びもとの席に戻ってきた。
「しっかし、ほんとひどいな」
 腰掛けがてらに久々知が髪の毛に絡んだ枝の切れ端を摘んで除く。枝につられて頭髪の二、三本も持っていかれるが、今更なので互いに気にかけるふうは無い。あとの二人は肩と背中の土と払ってくれて、竹谷は米を噛みながら礼を言った。
「そういえば髪で思い出した。俺、ちょっと前にタカ丸さんに髪切ってもらったんだけど、」
 ひたすら竹谷のゴミを取っていた久々知が不意に喋る。もつれた髪から枝やら枯葉やらを引き抜く際の抵抗が楽しいのか、手は止まらない。
「何? ノロケ?」
 片肘突いて顎をしゃくる鉢屋の唇の端から覗く白い犬歯。小馬鹿にした口調に、流石の久々知も手を止め、
「そんなんじゃない」
 ムッとして反論する。
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