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□princess*prince
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「……は?」
 告げられたら言葉は予想を遥かに超えたモノだった。

      【1】

 都立・青春台総合病院。
 地区予選・決勝のゲーム中、思わぬアクシデントで瞼をザックリ切ったリョーマは出された制限時間10分という条件をクリアして勝利を治めた後、顧問の竜崎によって病院へと引っ張って来られては居た。
「んな大騒ぎする程、大した事じゃないのに……」
「其れだけ流血しといて何処が大した事無いンだい! ……ほら、行くよ!!」
 ブツブツと言っている間にリョーマの名が呼ばれ、またしても竜崎に引き摺られる。
 半眼で溜息を吐きながら、小柄な青いジャージの少年は診察室へと姿を消した。


「コレ、本当にテニスでやったのかい?」
「……はい」
「さっきの手首痛めた子といい、おっかないテニスだねぇ」
「……」

 取り敢えず重傷では無さそうだからと回された一般外来で担当の医師から半ば呆れたようなコメントが述べられる。
 本日2度目の対面相手に苦笑を矧いだ竜崎の傍らに、医師は何気無く声音を続けた。
「他に何か気に成るトコ有る? 何なら序でに診るよ??」
「あー、時に無いッス。強いて言うなら朝起きらんないくらいで」
 暫し考えて肩を竦めたリョーマに医師は僅かに首を傾げた。
「いや、目覚めが良くないというのも何らかの身体からのシグナルの場合が有るんだよ? どうせ其の怪我でまた来るんだし、採血してちょっと調べてみようか」
「え、いいッスよ!」
「そう言うなリョーマ。こんなコトでも無けりゃ病院なんて無縁なんだから調べて貰え」
 無駄に元気なんだからねぇと溜息を吐く顧問を一睨みするも一向に堪えた様子は無く、リョーマ疲れたように肩を落とすと腕を差し出した。
「……お願いします」
「はいよ」
 2人の遣り取りに笑みを湛えて、医師は注射器を手に取った。
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