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□princess*prince【高校編】
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 極東の島国に出会いと別れが満ちる頃。
 春休みもコンスタントにスケジューリングされている青学・高等部テニスの貴重な休みに此れと言った予定も無く不本意ながら1つ下の後輩と連れ立って陸橋から街を見下ろして居た菊丸は、不満げに声音を吐いた。

      【1】

「あ−ぁ、折角の休みだっていうのに何時もと同じ顔見てるなんてにゃ〜」
「な! 其りゃねぇよ、其りゃねぇッスよ菊丸先輩。自分から誘っておいて!! ……ってか、其の台詞2年くらい前にも聞いたような気がするんスけど」
 奢って貰ったホットココアの缶に口付けながら胡乱げに返して来たのは高等部1年、桃城武。
 自身から遅れる事1年、再び部活の後輩と成った相手に視線も向けずに眼下を眺めて居た菊丸の目が、見慣れた姿を捉えた。
「にゃ!?」
「ドウしたんスか?」
「手塚だにゃ!」
「え?」
 安全の為、貼られた金網に掴まり食い入るように眼差す視線の先を追う。
 其処には確かに、所属クラブの部長の姿が在った。
―――手塚国光。
 高1の春から約1年間留学して居たドイツから帰国後、直ぐにレギュラー入りし見事インターハイ優勝を成し遂げた。
 留学中に懸念材料だった利き腕の問題も完全に克服して戻って来た部長の姿を見止めて、桃城は自然と己の眉間に皺が寄るのが分かった。
「……アレ、一緒に居るのドウ見ても女の子ッスよね」
「―――手塚が微笑ってるにゃ。浮気だにゃ……!」
 確かに、あの部長には珍しく柔らかな笑顔。(←失礼)
 相手の顔は見えないが確実に笑い掛ける様子に、菊丸も厳しい様相を為した。
「おチビという者が在りながら! 追い掛けるぞ、桃!!」
「って、待って下さいよ! 英二先輩〜」
 離れて行くターゲットを見失わないように素早く行動を開始した先輩の後を桃城は慌てて追った。
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