漆黒の空

□シリーズ3
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あれから、何週間か時間か経っていた。

あの人には出逢ってない。

もちろん、私から誘うなんて出来ない!!






そう 思いながら月日は経っていった。





『おはようございま〜す!皆さん検温の時間です!測らせて下さーい』

もう、あの時のことは殆ど忘れていた。

『じゃあ、今から検査がありますから、行きましょうね?』

私はいつものように忙しく仕事をしていた。

『佐藤さん、今から散歩にでませんか?外がとてもいい天気で気持ちいいですよ?』



時間に少し余裕が出来たので、私は個室に入院している高齢の女性を散歩に誘った。

いつも一人個室で寂しそうにしていた佐藤さんは、私の誘いに「忙しいのに…」と遠慮されたけど、その表情はとても嬉しそうだった。


『わー!思ったより風が吹いてますねー!』
「でも、気持ちいいよ」

木々がかなりザワザワと揺めいているけど、散歩に出れたのが嬉しいのか、それさえもイヤそうじゃなく、むしろ楽しそうだった。

「ありがとう」



この仕事は、色々とイヤなことも多いけど、この言葉ですべてが洗い流される。

『いいえ…』



私達は暫く風を堪能していた。
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