百四小説 1
□飼い主と犬と守る者
1ページ/4ページ
百目鬼は、今日も黙々と四月一日の作った弁当を食べていた。
「もぎゅもぎゅ」
奇妙な音をたてながら…。
先程から、その様子を観察していた四月一日だったが、次第に苛立ちが増していく。
なぜ、二人きりで弁当を食べなくてはいけないのか。
なぜ、作る事が習慣になっているのか。
なぜ、料理の感想を一言も口にしないのか。…まぁ、夢中で食べてるのはわかるが。
「おい、百目鬼」
「もぎゅ?」
「なんだ?じゃねぇ」
首を傾げる百目鬼にすぐさま突っ込む。
睨みつけても、こいつには通用しない。
それを苦々しく思う。
と、四月一日はふと思いついた。
おもむろに、おかずの一つを箸で掴み百目鬼の口許に運ぶ。
「?」
再び首を傾げる百目鬼に四月一日はにやりと笑うと、
「ほら、食えよ」
と言った。
とにかく食欲に勝てない百目鬼は、差し出されたそれをぱくりと食べた。
「どうだ、うまいか?」
「もぎゅ(あぁ)」
その返答に再び四月一日は意地の悪い笑みを浮かべた。
.