百四小説 1
□帰り道
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もうすぐ4月だとはいえ、吹く風は冷たく俺は身を縮めた。
あまりの風の強さに涙が溢れた。
指先で拭う。
隣を歩く百目鬼がこちらを見つめているのに気付いて、顔を上げる。
その表情は、どこか不安気に揺れていて…
「どうした?」
思わず声をかける。
「またアヤカシか」
真剣な表情。
あぁ、もしかして
「泣いてるように見えたのか?」
尋ねると、こいつにしては珍しく呆けた顔をして。
その表情に吹き出しそうになるのを堪えて
「泣いてないよ。大丈夫」
と言ってやった。
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百目鬼は、そのやわらかく艶やかな笑みに、思わずその身を引き寄せた。
わたわたと暴れる相手をぎゅっと抱き込む。
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わずかなお香の香りが俺の鼻孔をくすぐった。
ゆっくりと目を閉じて、百目鬼に身を預ける。
あぁ、この安堵感。
いつまで俺のそばにいてくれるんだろうな、お前は。
そんな想いをを知ってか知らずか
「ずっと、そばに…」
ふいに聞こえた百目鬼の呟きが、いつまでも甘やかに俺の耳に残った。
***end
なんか最近寒すぎて、涙がぽろぽろ出ます。
そして妄想した結果こんな小説になりました。