百四小説 1

□帰り道
1ページ/1ページ

もうすぐ4月だとはいえ、吹く風は冷たく俺は身を縮めた。

あまりの風の強さに涙が溢れた。
指先で拭う。

隣を歩く百目鬼がこちらを見つめているのに気付いて、顔を上げる。

その表情は、どこか不安気に揺れていて…

「どうした?」

思わず声をかける。

「またアヤカシか」

真剣な表情。

あぁ、もしかして

「泣いてるように見えたのか?」

尋ねると、こいつにしては珍しく呆けた顔をして。

その表情に吹き出しそうになるのを堪えて

「泣いてないよ。大丈夫」

と言ってやった。


**********


百目鬼は、そのやわらかく艶やかな笑みに、思わずその身を引き寄せた。

わたわたと暴れる相手をぎゅっと抱き込む。


**********


わずかなお香の香りが俺の鼻孔をくすぐった。

ゆっくりと目を閉じて、百目鬼に身を預ける。

あぁ、この安堵感。

いつまで俺のそばにいてくれるんだろうな、お前は。

そんな想いをを知ってか知らずか


「ずっと、そばに…」

ふいに聞こえた百目鬼の呟きが、いつまでも甘やかに俺の耳に残った。




***end




なんか最近寒すぎて、涙がぽろぽろ出ます。

そして妄想した結果こんな小説になりました。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ