百四小説 1
□生徒×教師
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今日は家庭訪問だ。
四月一日が家に来ると思うと、緊張する。
そわそわと家をうろついてると、妹のひまわりが自室から出てきた。
「どうしたの、静お兄ちゃん」
兄である俺が言うのも何だが、愛らしい笑顔を向けてきた。
「いや、今日はうちに担任が来るんだよ」
「へぇ〜。あのかっこいいって噂の先生でしょ?」
…かっこいい?…かわいいではなく?
いや、そんな事じゃない。
やはり人気があるな、あいつは。
俺は三年、妹は一年。
学年を跨いでそんな噂が立つというのは…まずいだろ。
眉間に皺が寄る俺を妹が不思議そうな顔で見ている。
「お兄ちゃん?」
「なんでもない」
ピンポーン
まさか、もう?
時計を見ると14時。
四月一日が来る時間だ。
「はーい♪」
そう返事をする妹を押し退けて、俺は玄関に急ぐ。
扉を開けると不機嫌そうな顔で四月一日が立っていた。
「よぉ」
「あぁ」
短い挨拶をすると後ろからぱたぱたとひまわりが走ってきた。
「もうっ。お兄ちゃんてば突き飛ばさないでよね」
「あぁ、悪い」
「え。もしかして妹さん?お前にこんな可愛い妹がいるとはなぁ」
「お前の方がかわいい」
そう振り向いて言うと、思いきり頭を強打された。
壁にぶち当たり、血が額から流れるが、そんな俺に頓着せずに四月一日は妹に笑顔を向ける。
妹は頬をうっすらと紅くして…
紅く、して…?
「あ、あの、先生!!好きな人とかいるんですか?!」
四月一日の両手をがっちりとその両手で掴み妹が叫んだ。
初対面でその質問はないだろう、妹よ。
「へ?」
四月一日は余程びっくりしたのか、言葉が出てこないようだった。
俺は、そんな二人の様子を見て血に濡れた頭を抱えた。