百四小説 1
□素直になるおクスリ
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「うがー!!!や、やめろ百目鬼ぃ〜〜!」
顔中にキスをしてくる百目鬼に叫ぶ。
押し返しても、日頃から鍛えているこいつに敵うはずもなく。
なんだ?!なんなんだコレは?!
頭はもうパニック寸前。
何でこういう状態になったのか?と、思い返してみる。
**********
バイトが終わって店から出たら、百目鬼が待っていた。
これはいい。
いや、良くないけど。
そして、何の脈絡も無く押し倒されたのだ。
だめだ。
思い返したって無駄だった。
「あらぁ、効きすぎちゃったのかしら?」
「ゆ、ゆーこさ、」
助かったとばかりに見上げると、その手には何やら液体の入った小瓶が。
なんスか。それ。
…
……
………あんたが元凶かぁぁあ!!
頭を抱えて、あらゆる方向に体を捻る。
「やぁね四月一日。変な動き」
くすっと意地悪く笑う侑子さんを睨みつける。
「やーん。怖いー。」
くっそ。棒読みかよ。
「ちょ、コレどうにかして下さいよ。それになんスか、何かの薬ですかそれ。」
「そうよ?素直になるだけの薬。まぁ、極端な方向にいっちゃったみたいだけど。」
いっちゃったみたいだけどって……。
「はじめて使うから分からなかったのよねぇ、効力が」
百目鬼。お前実験台にされてるぞオイ。
少しこいつに同情する。
見ると視線がまともにかち合った。
「わ…たぬき…」
熱っぽい声で囁かれて、顔が熱くなる。
ってか…顔が近い!
ぼうっとしている上に微妙に涙目になってる百目鬼。
も、もうほんとにどうにかして。
たすけて。
「んじゃ、私は店に戻るわ。ごゆっくり〜♪」
「待てコラァアア!!」
「もー。ほんとうるさいわね」
耳を塞ぐ侑子さん。
だが、息を切らせながらも頼み込むしかなかった。
「た、対価は払います。だからお願い。どうにかしてくだ、さ…」
「仕方ないわねぇ」
どこからともなく紐のついた五円玉を取りだし、百目鬼に見えるようにゆらゆらと横に振る。
「もどーる、もどーる」
うわー。やる気ねぇなぁー。
「あ?」
しかし効果はあったようで、百目鬼の焦点が合った。