百四小説 1

□醜い争い
1ページ/2ページ



「九軒、お前調子に乗るなよ」

「え?百目鬼くん、急にどうしたの?」


微笑んでいるが、瞳は笑っていない。

そして、その口端にはあんこがついている。


俺が来る前に、また四月一日の手作り菓子を食べていたらしい九軒を睨みつけた。


「百目鬼?お前顔が怖いぞ。ほんとにどうしたんだよ」


そういう四月一日は、不思議そうな顔をしている。


「昼食前に菓子を食べたら太るぞ」

「なんだと?!ひまわりちゃんが太るわけないだろ!…って、え?なんでバレたんだ」


お前の目は節穴か。

九軒を見ればわかるだろうに。

フィルター越しに見てるだろ、お前。


「やだなぁ百目鬼くん。ヤキモチ?」


その言葉に、ぐっと詰まる。

こいつ。

人が気持ちを明かせなくて苦しんでるってのに、爽やかに言いやがって。

本当に腹が立つ。


「ヤキモチ?!お前、やっぱりひまわりちゃんの事を…!あぁ言えねぇっ!この先は言いたくねぇえ!!」


やっぱりまだ勘違いしてやがるし。


「ふふふ。四月一日くん、大丈夫だよ。わたし百目鬼くんになんて、これっぽっちも興味ないから。むしろ敵だから」

「ほんとにー?ひまわりちゃん。良かったぁ」


…九軒め。てか四月一日。気付け。

毒舌な九軒に。


「四月一日くん。次はシュークリームがいいな」


自分でも顔が引きつるのがわかる。

九軒、お前はどこまで図太いんだ。


「わかったよぅ〜ひまわりちゃん!腕によりをかけて作るから〜」


作っちゃうのかよ。


「おい。九軒お前…」

「きゃー百目鬼くん怖いー」

「てっめぇ、ひまわりちゃん涙ぐんじゃったじゃないか!謝れ!!」


今の棒読みの台詞に熱くなるこいつ。

後ろで九軒がにやりと笑ったのが見えた。




…この女…いつか絶対に、地獄に叩き落としてやる…。


***end


あとがき→
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ