百四小説 1
□醜い争い
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「九軒、お前調子に乗るなよ」
「え?百目鬼くん、急にどうしたの?」
微笑んでいるが、瞳は笑っていない。
そして、その口端にはあんこがついている。
俺が来る前に、また四月一日の手作り菓子を食べていたらしい九軒を睨みつけた。
「百目鬼?お前顔が怖いぞ。ほんとにどうしたんだよ」
そういう四月一日は、不思議そうな顔をしている。
「昼食前に菓子を食べたら太るぞ」
「なんだと?!ひまわりちゃんが太るわけないだろ!…って、え?なんでバレたんだ」
お前の目は節穴か。
九軒を見ればわかるだろうに。
フィルター越しに見てるだろ、お前。
「やだなぁ百目鬼くん。ヤキモチ?」
その言葉に、ぐっと詰まる。
こいつ。
人が気持ちを明かせなくて苦しんでるってのに、爽やかに言いやがって。
本当に腹が立つ。
「ヤキモチ?!お前、やっぱりひまわりちゃんの事を…!あぁ言えねぇっ!この先は言いたくねぇえ!!」
やっぱりまだ勘違いしてやがるし。
「ふふふ。四月一日くん、大丈夫だよ。わたし百目鬼くんになんて、これっぽっちも興味ないから。むしろ敵だから」
「ほんとにー?ひまわりちゃん。良かったぁ」
…九軒め。てか四月一日。気付け。
毒舌な九軒に。
「四月一日くん。次はシュークリームがいいな」
自分でも顔が引きつるのがわかる。
九軒、お前はどこまで図太いんだ。
「わかったよぅ〜ひまわりちゃん!腕によりをかけて作るから〜」
作っちゃうのかよ。
「おい。九軒お前…」
「きゃー百目鬼くん怖いー」
「てっめぇ、ひまわりちゃん涙ぐんじゃったじゃないか!謝れ!!」
今の棒読みの台詞に熱くなるこいつ。
後ろで九軒がにやりと笑ったのが見えた。
…この女…いつか絶対に、地獄に叩き落としてやる…。
***end
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